尾道市が「容赦なしの自転車撤去」
しよったん許さんで

「世界遺産登録」とかヌカしてしよった
市当局の愚行を許したらあかんで!

さる5月14日,「尾道市容赦なしの自転車撤去」と題して,広島テレビがこないなニュースを放送しよった。

世界遺産の登録を目指す広島県の尾道市では,景観を損なう放置自転車をなくすため,(きのうから)全国でも例のない容赦なしの撤去作戦が始まりました。●係りの人「禁止区域内の自転車は即撤去します」 JR東尾道駅前。市の職員らが駐輪禁止区域の放置自転車を次々と撤去していきます。自転車の行き着く先は市の保管場所ではなく,スクラップ車です。廃棄処分の根拠は,4月1日に施行された放置自転車防止条例。駅の周辺などを放置禁止区域に指定し,警告期間を設けずに撤去,または廃棄処分するという全国でも例のない厳しいものです。新宅准冶課長「ある日突然私の自転車がなくなったということが 充分考えられるので,駐輪禁止区域にはくれぐれも停めないで下さい」撤去作戦初日のきのう,廃棄された自転車は176台に上りました。尾道市は2ヶ月に1回程度撤去を行い街の美観を守りたいとしています。 (映像:再生にはReal Playerが必要です)

広島テレビの報道姿勢

同日朝にJR東尾道駅前で,市職員(中には異様な出で立ちの者もいた)が「“放置”自転車」を,次々とゴミ収集車に投げ込む様子が,市わい者の言とあわせて,映し出されたちうわけや。また,これを伝えよる女性アナウンサーの口調ちうたら,自転車に対する個人的敵意も交えとったんやろ,北朝鮮の国営放送を想起させるような,キテレツなもんやった。

こら,「“放置”自転車」が,日本のマスメディアでは冷静かつ理性的に扱われることのあらへんテーマやちうことを示す一例といえるちうわけや。

映像で見る限り,カンペキに破壊されよる自転車は,一見して壊れて使用に耐えんと判るとか,その判断に迷うようなもんはなく,使用に耐える思われるんはもちろんのこと,また利用者が引き続き使用する意志で置いたもんばっかりやちうことがよう判るちうわけや。まさに,利用者に対する恫喝といわねばならへん。

また,自転車が投げ込まれるゴミ収集車は,通常のゴミ収集に用いられよるもんや。自転車やらの金属をぎょうさんブチ込んだらごっつう消耗・損傷し,その分本来の市民生活に必要なゴミ収集に支障が出ることから,常識的に考えるんやったら,実際には,こないなことが平素恒常的に行われる可能性は低いと考えられまひょ。その点では,この映像がなんちうか、ようみなはんいわはるとこの「ヤラセ」やっちう可能性も否定でけへん。

もちろん実際にかかる行為が行われてても,こらまさに,春の交通安全運動期間にあって,「世界遺産登録」を目指すとして,尾道市わいが行った愚かしいパフォーマンスの「大本営発表」タレ流しやちうことには何ら変わりはあらへん。こないな報道を行った,ジャーナリズムの本分に反した,広島テレビの姿勢も糾弾せなあかん。

参考までに中国新聞は,「放置自転車、無警告で撤去 尾道市が条例案」(2003.2.21, 地域ニュース)で,こない伝えとった。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産登録を目指す尾道市は、景観を損なう放置自転車を町並みから追放するため、市議会定例会に二十五日、「自転車等の放置の防止に関する条例」案を提案する。四月一日の施行を目指す。JR駅周辺などを放置禁止区域に設定、警告期間を設けずに撤去または廃棄処分する。

 市職員を、廃棄物認定員に任命する。認定員は、放置自転車が使用可能かどうかを判断。駐輪場外に放置され、明らかに壊れている場合は禁止区域内外にかかわらず、即日廃棄処分する。利用可能な自転車は、禁止区域の場合が警告期間なしで、区域外の場合が七日間の警告期間後に撤去。三十日間保管した上でリサイクル処分する。

 市内の放置自転車は、年間七、八百台と、十年前に比べ四倍に増 加。これまで、道交法や遺失物法を援用して自転車を撤去していたため、明らかに壊れた自転車でも、六カ月の保管期間を設けなければならなかった。条例制定で、処分期間は三、四十日間と大幅に短縮される。

 市生活環境課は「放置自転車問題は、モラルに訴える方法ではもう限界。世界遺産を目指す上でも、条例が必要と判断した」としている。

尾道市わいの愚行と奇行

そもそも尾道市は,映画やドラマのロケ地としたかて知られよるように,坂がようけ平地がちびっとやさかい,自転車利用が「問題」を惹起するほどにようけなるとはいえへんし,また市の組織からしたかて,自転車「対策」担当部署が土木建設部(一般に土木部門が自転車「対策」をやると,利用者シカトの姿勢がひどく,かける費用もようけなる傾向にあるんや)やのうて市民生活部生活環境課にあるやら,「“放置”自転車」の「対策」に理性を失うようには,これまで思われへんかった。

一般論として「“放置”自転車」が「問題」となりにくい中にあって,「全国でも例のあらへん」強硬な「対策」の強行にうって出たんやろか。

「条例」とその問題点

「“放置”自転車」の「対策」のための条例は全国にようけあるが,現行の尾道市のもんは,2003年4月施行とどエライ新しいもんや。ここでは,「明らかに壊れている」と判断された場合即日廃棄処分する,「放置禁止区域」内では警告期間を設けんと「撤去」し(同「区域」外では7日間の警告期間の後「撤去」),30日の保管期限後「リサイクル処分」する,やらとしてん。これらが「全国でも例のない」とされるわけや。

すなわち,(1)「放置禁止区域」の内外を問わず「“放置”自転車」とみなされれば「撤去」できるとする点,(2)「保管期限」が30日と短い点,(3)「明らかに壊れとる」と判断する基準と主体,について問題があることが解るちうわけや。

(1)については,「“放置”自転車」とみなしたもんを「撤去」するに当たちう,「警告期間」と称するモラトリアムを課すことを,自らに免除する区域を指定するにすぎへんし,実質的に市全域において「撤去」するっちうことを正当化するゆう点で,異常なもんや。ほんでそれだけ市わいの権限(利権ともいえる)が肥大化しよるんや。

(2)の「保管期限」については,先行する他の自治体との比較に於いて,その短さが問題となるけど,こないな期間を設定するっちうこと自体が本質的問題やちうことを見逃したらあかん。そもそもなんぼ「“放置”自転車」よばわりしたかて,憲法・民法(ついでに言うたら,所有権の絶対は,権利能力の平等・契約の自由とともに,近代民法の3大原則のひとつなんや)やらによって保障されとるトコの,その所有権・財産権を否定するっちうことはでけへん。そないな中で,ヨリ効率的に処理するために,「“放置”自転車」を,「遺失物」・「無主物」・「占有離脱物」やらと同様にみなすことで,かかる「壁」を突破する試みが,これまでも全国各地の自治体でなされてきたちうわけや。件の尾道市もまた然りなんや。

行政わいの「都合」によって,憲法・民法その他の法が定め保障してきたはずの諸権利が侵蝕されることについて,またその一方で行政わいの権限が肥大化するっちうことについて,わてたちは不断の警戒を怠ったらあきまへんで。

これらは他の自治体に於いても,エスカレートする可能性がある点で,看過でけへん。

(3)については,「廃棄物認定員」とされた市職員が判断するとしてん。「明らかに壊れとる」と判断する客観的基準は示されておらへん。外観上の瑕疵,走行やらの機能,修理による回復可能性(この場合コストが勘案される)やらが,常識的には基準として考えられはるトコやけど,ここではいっさいこないなことは問われへん。「廃棄」を進めようとする市わいの意図だけがここでの唯一の判断基準や。

交通・移動についての問題はもちろん,リサイクルや資源についての問題もここでは認識されておらへん。要は,尾道市わいの認識では「“放置”自転車」が景観上の障碍物なんやし,それを除去するための口実作りが目的なんや。

粉砕すべきは,「“放置”自転車」やのうて,まさに尾道市わいによるこないな愚行であるといわねばならへん。

尾道市に限らんと,日本の自治体は,自転車「対策」はあっても「政策」はほとんどあらへんちう,否定的情況にあるんや。こらまさに,市民の移動・交通手段としての自転車の位置づけ,自転車利用者の権利・地位といったもんをことごとくシカト・抹殺するもんにほかいなりまへん。

世界遺産指定を目指す!?

こないな条例の制定は,尾道市を世界遺産に指定されることを,市わいが目指す中で行われたもんや。市わいをして世界遺産登録を目指さしめるに至った動機はようわからんけど,市わいがこれを口実としてやっとることは,現実に生活する市民の立場や存在とは関わりなく,あたかも映画やドラマのセットのごとく,見かけ上の景観を“美化”するっちうことや。またあわせて,空疎な地域ナショナリズムを鼓吹し,市民を上から組織化するっちうことも,意図されていまひょ。

いやしくも世界遺産登録をめざすんやったら,文化遺産を生み育てた先人に敬意を表し,この地で生まれ育まれた文化を,現在において受け継ぐだけやのうて,将来にわたちう,それぞれの時代情況の中でさらなるもんへと高めてゆく主体とならなあかん。

環境に優しい自転車に対する姿勢も,その試金石といえるんとちゃうか。自転車を景観上の障碍と認識する貧困な感性もまた,文化都市にふさわしい自転車政策の現実化の過程で,悔い改めてもらわなあかん。

ほかにもある尾道市わいの愚行と奇行

尾道市わい・市民生活部生活環境課はほかにもバカげたことをしとった。その一端を紹介しょう。尾道を世界遺産に登録するために,228万円の予算まで組んで,「イメージダウンになる」やらとして,「申請場所の野良犬, 野良猫の一斉捕獲を始める」ゆうものや。

当初,市わいは「あくまでも市民の苦情に対する対応なんやし,新聞社・放送局による報道は聞き間違い,または書き損じ」やらとして,破廉恥にも世界遺産申請との関係を否定しとった(実際にはかかる「苦情」の存在について語らへん)が,すでにこないな市わいの弁は,どなたはんも信じなくなっとった。ほんで今般の「容赦なしの自転車撤去」では,その準備段階から世界遺産申請との関係を公言してはばからんかった。

こないな愚行・奇行を知ってか知らずしてかは解らへんが,世界遺産を指定するユネスコとしては,尾道は眼中にあらへんようや。

やけど実際には,ようけの市民が餌を与えたり,罠にかかった動物を逃がしたりするやら,市わいの思惑とは逆の優しさを示してん。ここに一抹の安堵と可能性を見いだせまひょ。

尾道市わいによる,強権的自転車“対策”の強行を弾劾するちうわけや。
あわせて,「世界遺産登録」を口実とした,市民生活と環境に敵対するいっさいの愚行を弾劾するちうわけや。

ずぅぇえんぶの尾道市民,ほんで尾道を訪れるずぅぇえんぶの皆はん。
市わいが捕獲した犬や猫を逃がし,餌を与えるといったことに示されたような優しさと温かいな心を,自転車および利用者にも向けたってほしいんや。ほんで,「ずぅぇえんぶの都市住民と環境に優しい」街の実現を,ともに目指そやないか。

(2003.5.24)

参考

尾道市容赦なしの自転車撤去」(映像)(2003.5.14,広島テレビ 広島のニュース)
放置自転車、無警告で撤去 尾道市が条例案」(2003.2.21,中国新聞 地域ニュース)
「尾道市 容赦なしの自転車撤去」は?」(2003.5.17,自転車社会学会 −門岡淳はんの個人サイト)

尾道市当局にメールを送りました

尾道市当局による強権的「“放置”自転車」対策を弾劾する

尾道市長殿

当方は,「すべての住民と環境に優しい街を」のコンセプトのもと,「都市生活改善ボランティア〜Volunteer for Reforming Urban Life」サイトの運営を行っています。

ここでの課題のひとつは,あまりにおかしな日本の自転車政策を根底から批判し,自転車と利用者の地位向上をめざすことにあります。

かかる立場から,このたびきわめて遺憾な事態に接しました。

4月1日に施行された放置自転車防止条例をタテに,駅の周辺などを「放置禁止区域」に指定し,警告期間を設けずに撤去,または廃棄処分するとのことですが,今般,チェーンキーをカッターで切断し,その場で破砕装置を積んだ車に回収した自転車を突っこんで,つぶしてスクラップにする現場が,報道されておりました。

もちろん今回の報道内容が,通常・平素の尾道市における自転車「対策」の一般的情況・水準を反映したとは考えませんが,たとえ一部・一端であっても,かかる愚行が存在したことは,決して看過できないものであると言わねばなりません。こうした尾道市当局による強権的「“放置”自転車」対策を弾劾します。

そもそも尾道市は,映画やドラマのロケ地としても知られるように,坂が多く平地が少ないため,自転車利 用が問題を惹起するほどに多くなるとはいえず,また市の組織からしても,自転車「対策」部門が土木建設部ではなく市民生活部生活環境課にあるなど,「“放置”自転車」の「対策」に理性を失うようには,これまで思われませんでした。

尾道市に限らず多くの日本の自治体は,自転車「対策」はあっても「政策」はほとんどないという,否定的情況にあります。これはまさに,市民の移動・交通手段としての自転車の位置づけ,自転車利用者の権利・地位といったものをことごとく無視・抹殺するものにほかなりません。また,自転車を景観上の障碍と認識する貧困な感性を悔い改めることも,文化都市にふさわしい自転車政策の現実化の過程で,求められるものであるといわねばなりません。

いやしくも世界遺産登録をめざすなら,文化遺産を生み育てた先人に敬意を表し,この地で生まれ育まれた文化を,現在において受け継ぐのみならず,将来にわたって,それぞれの時代情況の中でさらなるものへと高めてゆく主体とならねばなりません。

環境に優しい自転車に対する姿勢も,その試金石であります。


広島テレビ放送にメールを送りました

「尾道市容赦なしの自転車撤去」について

広島テレビ放送(広島のニュース担当)御中

当方は,「すべての住民と環境に優しい街を」のコンセプトのもと,「都市生活改善ボランティア〜Volunteer for Reforming Urban Life」サイトの運営を行っています。

ここでの課題のひとつは,あまりにおかしな日本の自転車政策を根底から批判し,自転車と利用者の地位向上をめざすことにあり,こうした立場から,自転車利用者の権利擁護,地位向上,自転車利用の効果的促進のための調査・提言を行っています。

かかる立場から,さる5月14日,「尾道市容赦なしの自転車撤去」と題して報道された番組の内容,および報道姿勢に関して,厳しい態度で臨む必要があることを痛感いたしました。

4月1日に施行された放置自転車防止条例をタテに,駅の周辺などを「放置禁止区域」に指定し,警告期間を設けずに撤去,または廃棄処分するとして,尾道市関係者の言とあわせて,チェーンキーをカッターで切断し,その場で破砕装置を積んだ車に回収した自転車を突っこんで,つぶしてスクラップにする現場が,報道されておりました。

これにはいくつかの疑問点・問題点があるといわねばなりません。

この条例では,「“放置”自転車」の「撤去」にさいして,市職員を「廃棄物認定員」として,それが自転車が壊れているか否かを判断して「廃棄処分」の対象とするか否かを判断することになっているようですが,映像では,破壊されている自転車は,使用に耐えると思われるのはもちろんのこと,また利用者が引き続き使用する意志で置いたものばかりでありました。これは,憲法・民法上はもちろんのこと,尾道市の条例にてらしても不法行為となり,当該報道は,かかる行為を看過し,あまっさえそれに加担することになるといわざるをえません。

また,自転車の破壊に用いられているのは,通常のゴミ収集車であります。自転車などの金属を多量に投入すれば著しく消耗・損傷し,その分本来の市民生活に必要なゴミ収集に支障が出ることから,実際には,こうしたことが平素恒常的に行われる可能性は低いと考えられます。その点では,当該映像がいわゆる「やらせ」である可能性も否定できません。また実際に,市当局がかかる行為を行い,それを映し出したものであっても,春の交通安全運動や,世界遺産登録を目指しての市当局のパフォーマンスということになり,これを盲目的に下支えするものであることには変わりありません。

かかる判断と行動が行われた過程について,御局として疑問の余地はなかったのでしょうか?

個別具体的内容もさることながら,報道姿勢についても問題点を指摘せざるをえません。

これを伝える女性アナウンサーの口調は,「“放置”自転車」の「ホウ」に不自然な強勢を置くなど,自転車に対する個人的敵意を交えていたのではと思わせるようなものでありました。かつ威圧的で,北朝鮮の国営放送を想起させるような,異様なものでありました。

当該番組はまた,先に指摘した問題点はもちろんのこと,自転車は,利用者がその目的のために,移動・交通手段として利用するものであるという,通常であれば当然にもなされるべき理解や認識を欠いた尾道市当局の立場を代弁し,無批判的にタレ流すものであり,自転車利用の現状,自転車利用者の立場を無視した,一方的な観点からつくられたものである点で,看過できません。端的に言えば,偏向報道ではないでしょうか。

以後,標記番組に限らず,御局全体として,自転車利用の現状,自転 車利用者の立場に配慮した番組制作をされますようお願いします。

この件に限らず,世界遺産登録を目指すと称して,尾道市当局は市民生活や環境を破壊しつつ,見せかけだけの「美観」を作り出すべく,奇行・愚行を重ねております。こうしたものに眼を光らせることも,地元マスメディアとしての御局の重要な使命のひとつではないでしょうか。

今後の御局の発展を祈念いたします。

標記番組および,自転車利用についての当方の見解は,
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/4515/ にて
表明しておりますので,詳細についてはそちらをご覧下さい。