ＴＶ番組「金曜フォーラム」で
ちょっとおかしなこと言うてたで
（NHK教育テレビ2000年11月３日放送）

この番組ではやな，日蘭交流400年を記念するちゅうシンポジウムで，自転車利用で先いっとるオランダの事例を紹介し，それを日本へどないしたら適用できるやろかっちゅう議論がされとった。関連分野の専門家や，実際にオランダの街で自転車に乗ってきよった女優らに混じちう，市民の立場からの街づくりを推進する活動をしてんちゅうグループの代表やぬかすやつが混じっとった。

そいつのグループがどないなもんか，用心してかからなあきまへん。板橋区内におます東武東上線のとある駅前の商店街の活性化を考えんのが，そもそもん出発やった。そないな連中が，駅前にある“放置”自転車を目の敵にしよって，その追っ払いを活動の出発点にするんに，大した理由は要らへんかった。

駅前に自転車とめて電車で都心へ向かう利用者が，商店街にお金を落としてくことはほとんどあらへんし，そないな彼らの置いた自転車が一日中そいつらの眼ん前に残されるゆうあんばいになったんや。しかも，行政による“放置”自転車追放キャンペーンにものせられよって，長期不況だけやのうて商店街・個人商店をめぐる昨今のエラい情況に対して，解決策が見つかる展望があらへん中で，自らに利潤をもたらさへん，こないな自転車へ八つ当たりするようにと，矛先を向けていきよったんや。こないな出発点が，彼らの行動や意識を本質的に規定しとる以上，彼らのぬかす提言で，自転車利用がもそっとようなりよることは，期待でけへんもんや。もちろんこないな姿勢が，彼ら自身にもためにならんことも確かで，彼ら自身が脚下照顧して，観念的な「地域活性化」策やらなんやらやのうて，ねきはもちろん，ちびっと離れたトコからでも自転車に乗って買い物に行きたなるような，買い物客にとって魅力ある商店街づくりを，現実的・具体的に考え実践せなあかんやろう。

彼らが，板橋区から豊島区の池袋に至る自転車道路を整備せえてなことを，両区に提言したことが紹介されとった。もっとも東武東上線の都内区間は板橋区内と池袋をほぼ最短距離で結ぶ，川越街道（国道254号線及び旧道）に並行してんねんさかい，新設道路が現在の川越街道より短こなることはあり得へんし，そないな道路をつくる意味が自転車利用者にとってあるんか疑問やちうわけや。“放置”自転車「対策」のなりだけしよって，それをかさにきよって，道路新設して土木的利権ひねりだそうっちゅう魂胆見え見えや。しかも，その過程で当然にも用地買収やらなんやらも伴うわけで，それを通じて，自転車利用者を悪う思わせたり，市民・住民間いがみあわせて，地域コミュニティーをぶっ壊すんもまた，織り込み済みやていわなあかんわな。もっとも今ある道路をもそっと安全に走れるようにっちゅう提言やったら，自転車利用者のためにもなるやろうが，そないなことを期待できる情況とちゃうんや。

池袋まで自転車で行きやすなったら，そないする人もおるやろ。せやけどダンさん目的地がそれより先の都心やったり，自転車で池袋まで行けへん人も，割とぎょうさんいてはるやらなんやら，自転車利用の在り方及び利用者の体力や経済力やらなんやらの違いや多様性にも，当然配慮したらなあかん。こないなことがまるっきし没却されとるんは，ひとえにこれが自転車利用者の声を聞いてのもんやないからや。あのおっさんはその場において，行政わいの“放置”自転車追放キャンペーンとうり二つのことほざいとっただけやのうて，自転車利用者の声をシカトし，権力を振りかざして，これに敵対してきた豊島・板橋両区が，まるで自転車利用者に優しい区政をしとったかの如き幻想を振りまくゆう，犯罪的役割すら果たしやがったのや。

人がオノレの意志に従って自由に移動するっちうことは，「交通権」を主張するよりどエライ昔に，当ったり前の固有の権利なんや。その選択肢が増えることはええこっちゃ言えるけど，現に割とぎょうさんの者(もん)が必要としてんPark & Rideの機会を排除するっちうことは，容認してはならへんもんなんや。またそないなことが「市民」の名においてなされたことは，見過ごされへん。それ以上に，自転車利用者をシカトしよる政策を，えー加減やめさせて，自転車利用者の声をどないして上げて現実化させてったらええんか考えることが，大事で急ぎの課題や言うとかなならへんやろ。

(2000.11.5,「『金曜フォーラム』に関して」として掲載。2000.12.06改稿）

追記

国土交通省「まちづくりと自転車を考えるホームページ」を斬る！

この番組で採り上げられとる，自転車道路計画は，国土交通省（旧・建設省）の「まちづくりと自転車を考えるホームページ」で「モデル都市 8 板橋区・豊島区（東京都）」として紹介されとるものや。ほんで区自身が「板橋区・豊島区 自転車利用環境整備基本計画 ―概要版―」でアホぬかしとるにいたっては，もうあいた口がふさがりませんわ。「モデル都市」ちうもっともらしい名前が付いとっても，その実は真に自転車利用者のためやあらへんちうことを，ちびっとでも本稿を通じてわかってくれはったら幸いでんな。

豊島区がこれまでしてきやがった自転車政策が，行政当局者の自転車利用者無視・自転車敵視の姿勢と，「対策」を口実にした土木利権の異常なまでの追求に貫かれたものやちうことについては，「豊島区がしやがること」を参照したってや。