豊島区「放置自転車等対策[推進]税」
関連資料

東京都豊島区放置自転車等対策推進税条例

(平成15年12月10日条例第45号)

(課税の根拠)
第一条 鉄道駅周辺における放置自転車等対策の推進を図るとともに、放置自転車等の撤去及び保管、自転車等駐車場等の施設整備及び維持管理その他放置自転車等対策事業に要する費用の一部に充てるため、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号。以下「法」という。)第五条第七項の規定に基づき、放置自転車等対策推進税を課する。

(用語)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 鉄道事業者 鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第七条第一項に規定する鉄道事業者のうち、豊島区の区域内(以下「区内」という。)において旅客運送事業を行う者をいう。
二 乗車人員 区内に所在する鉄道駅から乗車した人員(ただし、同一鉄道事業者の鉄道駅において路線を乗り継いで乗車した者及び他の鉄道事業者の鉄道駅から連絡乗車券を利用して乗車した者を除く。)をいう。

(法等の適用)
第三条 放置自転車等対策推進税の賦課徴収については、この条例に定めるもののほか、法令及び豊島区特別区税条例(昭和三十九年豊島区条例第三十四号)の定めるところによる。この場合において、同条例第三条第二項中「入湯税」とあるのは「入湯税及び放置自転車等対策推進税」と、同条例第三条の二第一項中「この条例」とあるのは「この条例及び豊島区放置自転車等対策推進税条例(平成十五年豊島区条例第四十五号)」とする。

(納税義務者等)
第四条 放置自転車等対策推進税は、区内に所在する鉄道駅における前年度の旅客運送に対し、当該前年度の乗車人員を課税標準として鉄道事業者に課する。

(税率)
第五条 放置自転車等対策推進税の税率は、千人につき七百四十円とする。

(徴収の方法)
第六条 放置自転車等対策推進税は、申告納付の方法によって徴収する。

(申告納付の手続)
第七条 放置自転車等対策推進税を申告納付すべき納税者は、毎年十月一日から同月末日までに、課税標準たる前年度の乗車人員(以下「課税標準数」という。)及び税額その他規則で定める必要事項を記載した申告書を区長に提出するとともに、その申告した税額を翌年一月末日までに納付しなければならない。
2 前項の場合において、第十四条第三項の規定による減免額の決定の通知があったときは、申告した税額から当該減免額を控除して納付することができる。

(期限後申告等)
第八条 前条第一項の申告書を提出すべき者は、当該申告書の提出期限後においても、第十条第四項の規定による決定の通知があるまでは、前条第一項の規定によって申告書を提出するとともに納付することができる。
2 前条第一項又は前項の申告書を提出した者は、当該申告書を提出した後においてその申告に係る課税標準数又は税額を修正しなければならない場合においては、遅滞なく、規則で定める修正申告書を提出するとともに、その修正により増加した税額があるときは、これを納付しなければならない。
3 前項の修正申告書に係る税金を納付する場合は、当該税金に係る前条第一項に規定する納期限(納期限の延長があったときは、その延長された納期限。第十二条第二項において同じ。)の翌日から納付の日までの期間の日数に応じ、当該税額に年十四・六パーセント(修正申告書を提出した日までの期間又はその日の翌日から一月を経過する日までの期間については、年七・三パーセント)の割合を乗じて計算した金額に相当する延滞金額を加算して納付しなければならない。

(不申告に関する過料)
第九条 第七条第一項の規定によって申告すべき事項について正当な事由がなくて申告をしなかった場合においては、その者に対し、三万円以下の過料を科する。
2 前項の過料の額は、区長が定める。
3 第一項の過料を徴収する場合において発する納入通知書に指定すべき納期限は、その発した日から十日以内とする。

(更正及び決定)
第十条 区長は、第七条第一項の申告書又は第八条第二項の修正申告書の提出があった場合において、申告又は修正申告に係る課税標準数又は税額がその調査したところと異なるときは、これを更正することができる。
2 区長は、納税者が前項の申告書を提出しなかった場合においては、その調査によって、申告すべき課税標準数及び税額を決定することができる。
3 区長は、前二項の規定によって更正し、又は決定した課税標準数又は税額について、調査によって、過大であることを発見した場合又は過小であり、かつ、過小であることが納税者の偽りその他不正の行為によるものであることを発見した場合に限り、これを更正することができる。
4 区長は、前三項の規定によって更正し、又は決定した場合においては、遅滞なく、これを納税者に通知するものとする。

(更正及び決定等に関する通知)
第十一条 前条第四項の規定による放置自転車等対策推進税の更正又は決定の通知、法第七百三十三条の十八第五項の規定による放置自転車等対策推進税の過少申告加算金額又は不申告加算金額の決定の通知及び法第七百三十三条の十九第四項の規定による放置自転車等対策推進税の重加算金額の決定の通知は、規則で定める通知書により行うものとする。

(更正及び決定に係る不足税額等)
第十二条 放置自転車等対策推進税の納税者は、前条の通知書により通知を受けた場合においては、当該通知に係る不足税額(更正による不足税額又は決定による税額をいう。次項において同じ。)又は過少申告加算金額、不申告加算金額若しくは重加算金額をそれぞれ当該通知書に記載された納期限までに納付しなければならない。
2 前項の場合においては、その不足税額に第七条第一項に規定する納期限の翌日から納付の日までの期間の日数に応じ、年十四・六パーセント(前項の納期限までの期間又は当該納期限の翌日から一月を経過する日までの期間については、年七・三パーセント)の割合を乗じて計算した金額に相当する延滞金額を加算して納付しなければならない。

(帳簿の記載義務等)
第十三条 放置自転車等対策推進税の納税義務者は、帳簿を備え、規則で定めるところにより乗車人員に関する事実をこれに記載し、第七条第一項に規定する納期限の翌日から起算して五年を経過する日まで保存しなければならない。

(減免)
第十四条 区長は、次の各号のいずれかに該当する放置自転車等対策推進税の納税者に対し、規則で定めるところにより放置自転車等対策推進税を減免することができる。
一 区内に所在する鉄道駅周辺において自転車等駐車場を区内に設置し、運営を行っている者
二 自転車等駐車場用地又は撤去自転車の保管用地等を豊島区に無償提供している者
三 前二号に掲げるもののほか、放置自転車等対策に対して特別に寄与していると区長が認める者
2 前項の規定により放置自転車等対策推進税の減免を受けようとする者は、規則で定める申請書を区長に提出しなければならない。
3 区長は、前項の申請書の提出を受けた場合は、調査のうえ減免額を決定し、納税者に通知するものとする。

(委任)
第十五条 この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。

(税収の使途)
第十六条 区長は、豊島区に納付された放置自転車等対策推進税の税収総額から放置自転車等対策推進税の賦課徴収に要する費用の総額を控除して得た金額を、放置自転車等の撤去及び保管、自転車等駐車場等の施設整備及び維持管理その他放置自転車等対策に要する費用に充てなければならない。

附則

(施行期日)
1 この条例は、法第七百三十一条第二項の規定による総務大臣の同意を得た日以後、規則で定める日から施行する。

(適用)
2 この条例は、この条例の施行の日以後に終了する年度の乗車人員に対して課すべき放置自転車等対策推進税について適用する。

(見直し)
3 区長は、この条例の施行後五年ごとに、条例の施行状況、放置自転車等対策の推進状況等を勘案し、この条例について検討を加え、その結果に基づいて条例の廃止その他必要な措置を講ずるものとする。

関連報道

「新税:放置自転車とワンルームマンションに 東京都豊島区」(2002.01.23『毎日新聞』)

 東京都豊島区は23日、放置自転車の撤去費用として1台当たり3000円を鉄道事業者に課税する「放置自転車等対策税」と、ワンルームマンションの建築主に1戸当たり50万円を課税する「ワンルームマンション税」を区独自の新税として検討していることを明らかにした。駅前の放置自転車の解消と「地域コミュニティの衰退を招く単身者の増加を抑える」のが狙い。両税とも5年間の法定外目的税で03年度の導入を目指す。導入されれば全国で初めて。

 同区は1日当たり4582台(99年調査)と全国最多の放置自転車がある池袋駅などを抱える。区は放置自転車の撤去に持ち主から1台3000円を徴収しており、JR東日本、都、営団地下鉄、西武鉄道、東武鉄道の5者にも同額の税金を課す構想。年間約2億1300万円の税収を見込んでいる。区は「鉄道事業者は鉄道法で自転車撤去への協力義務があり、事業者にも応分の負担を求める」と説明し、鉄道会社が駐輪場の設置など対策を講じた場合は税を減免するという。

 ワンルームマンション税は、床面積25平方メートル以下の部屋が15戸以上で総室数の3分の1以上を占める3階建て以上のマンションが対象。建築主から1戸当たり50万円を徴収し、年間3億3000万円を見込む。同区は30平方メートル未満のワンルームマンションが住宅総数の約20%を占め、単独世帯の割合は56%に上る。区は「定住者の多い街づくりを目指したい」と同税の目的を説明し、税収は家族世帯への補助に充てるという。「ワンルームマンションはすでに十分にあり、単身者を排除するものではない」と話している。 【長谷川豊】

"Toshima eyes tax on nuisance bikes, studio flats" (2002.1.25 The Japan Times)

「放置自転車お尋ねします JR3駅の周辺」(2002.6.17『朝日新聞』)

 駅前にあふれかえる放置自転車たちよ、どこから来て、なぜここにいるの?−−。駅前に放置されている自転車の「生態」をつかもうと、豊島区が今月下旬から、大がかりな調査を始める。鉄道会社に課税する放置自転車対策税構想も打ち出した豊島区。まず利用実態をつかむことで有効な対策につなげたいとしている。

 区によると、数えるだけでなく、放置理由や移動範囲などまで踏み込んだ実態調査をするのは、23区では初めてという。

 国の緊急雇用対策の補助金を使い、のべ400人の失業者を雇って3カ月間調査する。対象とする駅は、JR池袋、巣鴨、大塚の3駅周辺。ふだんの自転車整理は主に朝の時間帯だが、むしろ昼間の方が数が多くなる傾向もあるため、調査では時間を追って実数をつかむ。

 さらに、約4万枚の質問票のはがきを自転車にくくりつける。尋ねる項目は(1)駐輪目的(2)乗り換える交通機関(3)自転車を使う曜日(4)ここに放置した理由(5)駐輪場の利用料金がいくらまでなら利用したいか、などだ。男女別、年齢、住んでいる区も尋ねる。

 当初は、直接利用者を追跡する案も考えられたが、ストーカーと間違われるなどのトラブルも心配なため、質問票を返送してもらう方法を取ることにした。

 豊島区は3年前に池袋駅が全国ワースト1位、巣鴨駅がワースト4位になるなど、放置自転車に悩まされてきた。昨年も区内全体で約9000台の放置が確認されている。多くは駅前のため、新税は放置自転車の誘因者としての鉄道会社に対し、放置自転車の撤去1台につき3000円を課すことが検討されている。

 これに対し、鉄道会社は「放置しているのは、鉄道利用者だけでないはずだ」と反発、利用実態の調査を求めていた。

「「放置自転車対策税」と「ワンルームマンション税」、豊島区の導入「妥当」」(2003.9.4『毎日新聞』)

 ◇22日、全体会議で最終審議−−専門委が報告書案

 豊島区が全国初の導入を目指す法定外税「放置自転車対策税」と「ワンルームマンション税」について、区が設置した「専門委員会」(中村芳昭会長=青山学院大教授=ら学識者8人)は2日夜の会合で、両新税の導入を「妥当」とする報告書案をまとめた。今月22日の全体会議で最終審議されるが、税負担を求められる鉄道各社や住宅業界の代表は、改めて反対を表明する見通し。

 報告書案は、JRや私鉄、地下鉄の事業者に課税する「放置自転車対策税」について、「自転車放置や駐輪場利用の約70%は鉄道利用者」とする区の調査を踏まえ、「鉄道事業者は区の放置自転車対策に依存している」と判断。撤去や駐輪場設置などの費用の一部について「鉄道事業者に負担を求めるのは社会的合理性がある」とした。課税額は総額を区が算定し、鉄道各社の駅の乗車人員に応じて税額を割り当てる方式を提案し、区が計画する自転車1台当たり3000円という税率は認めなかった。

 また、ワンルームマンションの建築主に1戸当たり50万円を課す「ワンルームマンション税」については、同区内で単身世帯向け狭小住宅の比率が高いことを重視。「建築抑制の法定外税という手段も選択肢として認められる」とした。

 区は最終報告書で新税が認められれば、区議会での条例制定、総務省との協議を経て、来年度にも新税を導入したい考え。課税期間は両税とも5年間を予定している。【重長聡】

「放置自転車対策税成立へ 鉄道側は訴訟視野に反対」(2003.12.5『共同通信』)

 東京都豊島区議会の総務委員会は5日、駅周辺の放置自転車を減らすため全国で初めて、区が鉄道事業者に費用負担を義務付ける「放置自転車対策推進税」の条例案を、賛成多数で可決した。

 9日の本会議で可決、成立の見通し。区は総務相の同意を得て、来年度から実施する方針。

 委員会は5日、採決に先立ち、納税側のJR東日本など鉄道5事業者から意見聴取。事業者側は「自転車を放置する人が駅利用者とは限らず、税の公平性の原則に反する」と述べた上で、「訴訟も一つの選択肢として考えられる」(JR東日本)と提訴の検討も含め、強い姿勢で反対する考えを示した。

 審議では「自転車放置は鉄道事業者の責任ではなく、個人のモラルの問題」と慎重意見も出たが、「鉄道事業者がこれまで、区の放置自転車対策に十分協力したとはいえない。応分の負担をすべきだ」などとして、自民、民主区民、公明、共産の各委員が賛成した。

「放置自転車対策税に反対 鉄道事業5者が意見書」(2003.12.9『共同通信』)

 鉄道事業者に課税する「放置自転車対策推進税」の条例案が9日、東京都豊島区議会で可決されたのを受け、豊島区に乗り入れているJR東日本など5事業者は「新税導入の前に、駐輪場の利用率向上など取り組むべきことがある」とする意見書を発表した。

 意見書は「新税が導入されれば、他の自治体が同様の課税をすることが想像でき、全国の鉄道輸送事業に大きな影響を及ぼす恐れがある」としている。

 JR東日本、西武鉄道、東武鉄道、帝都高速度交通営団、東京都交通局の幹部がJR東日本本社(渋谷区)で会見。JR東日本の清野智副社長は「5者ということではなく、全国の鉄道事業者で運賃値上げが必要だという事業者が出てくるかも知れない」と述べた。

豊島区が「放置自転車等対策推進税条例」を制定」(2003.12.15『(社)行革国民会議』)

「総務省、異例の聴取へ 放置自転車税」(2004.3.15『朝日新聞』)

 豊島区が全国初の導入を目指している「放置自転車等対策推進税」について、総務省は近く、納税義務者となるJRなど鉄道会社と課税する区の担当者を招き、公開で意見聴取する方針を固めた。法定外税の創設には総務相の同意が必要。同意・不同意の判断を前に総務省が双方から「言い分」を公開で聴くのは初めてという。


 放置自転車税は、自転車の撤去や駐輪場設置など放置自転車対策にかかる費用を、JR、西武、東武、東京都交通局、営団地下鉄の5社にも負担を求める法定外目的税。区内の各駅での年間乗車人員に対し、1千人につき740円を鉄道会社から徴収。年間約2億円の税収を見込んでいる。

 昨年の11月区議会で同税条例案が可決、成立し、12月19日に総務相の同意を得るため、区は協議書を総務省に提出。今春、実施の予定で準備を進めている。

 総務省によると、豊島区の放置自転車税をめぐっては、これまで区と鉄道会社の主張が真っ向から対立、とりわけ鉄道会社は同税について違法とし、実施された場合、訴訟の構えを見せていることから、双方から意見を聴く必要があると判断。時期については4月上旬を予定し、公開の場で同時に意見聴取することを検討しているという。

 法定外税創設では、課税する自治体から意見を聴くが、今回のケースは異例の措置。双方の意見を正確に把握したうえ、同意・不同意の判断をしたいとしている。

 JR旅客6社と全国114の私鉄、地下鉄は1月28日、「全国の鉄道事業者の経営に甚大な影響を与える」などとし、総務相と国土交通相に同税に同意しないことを求める要望書を提出している。これを受け、国交省でも双方から意見聴取を実施中だ。

 豊島区は過去の例から、「3カ月ぐらいで総務相の同意は得られる」と見ていた。今回の総務省の措置に困惑気味だが、「公開の場でこれまでの主張を堂々と述べていきたい」としている。

「豊島区放置自転車税 総務省岡崎課長に聴く」(2004.4.7『朝日新聞』)

 豊島区が全国初の導入を目指している「放置自転車等対策推進税」に、総務省は同意するのか。不同意の判断を下すのか−−。総務省は9日、区と納税者となるJRなど鉄道5社の部長クラスを招き、自治体による法定外税新設では前例のない公開ヒアリングを開催する。当日、双方から意見聴取する岡崎浩巳・自治税務局企画課長に、異例の事態となった理由や聴取のポイント、今後の見通しなどをインタビューした。

 −−なぜ、公開ヒアリングを。

 「これまで区側、鉄道会社側から個別に意見聴取してきた。しかし、双方の意見が食い違っている部分が少なくない。とりわけ納税者側が『違法だ』と主張しているケースは、法定外税の新設をめぐっては初めて。じゃ、双方に来てもらい、双方に事実関係を確認しながら聴こう。世間の注目も集めており、こそこそやってもしょうがないとオープンにすることにした」

 −−聴取のポイントは。

 「同意の3要件である(1)国税や地方税と競合しない(2)物流に影響しない(3)国の経済政策を妨げない、に加え、憲法など全体的な法秩序との整合性、違法性の有無など。あくまで総合的に判断します。いまは全くの白紙状態。実はこっそり豊島区内の駅をほとんど歩いてきました。現場を見なきゃ、こんな難しい案件、判断できないじゃないですか」

 −−これまでに自治体の法定外税で同意、不同意の件数は。

 「00年4月の地方分権一括法の施行以降、同意した法定外税は核燃料税、産業廃棄物税など39件。不同意は3年前の横浜市の勝馬投票券発売税の1件のみ。総務省としては地方分権の流れの中、納税者の理解を十分に求めた上、法定外税の新設に積極的なスタンスを取っている」

 −−放置自転車税の同意、不同意の判断時期は。

 「公開ヒアリングの後、地方財政審議会にかける必要がある。ここでも双方から意見聴取する必要がでてくるかは同会長の判断。いずれにせよ、4、5月中に同意か、不同意かを決めることになると思う」


 JR東日本など鉄道5社の反対理由 放置自転車対策などを定めた「自転車法」では、鉄道会社の責任は「協力義務」の範囲にとどまり、対策費用の負担を鉄道会社に強制することは違法。また、課税の応益原則、および公平性の観点からも違法だ。さらに、同様の課税条例が他自治体に広がった場合、全国の鉄道会社の経営に甚大な影響を与える、と主張。


 9日の総務省聴取項目(1)鉄道会社の駐輪場設置の協力状況(2)今後5年間の豊島区内での放置自転車対策内容(3)放置自転車の現状と原因(4)放置自転車等対策推進税の違法性の有無(5)自転車法に基づく対策協議会の見通し(6)同税の減免措置(7)同税が実施された場合の他自治体への波及可能性(8)課税標準の確認方法(9)その他


 ■豊島区の放置自転車等対策推進税■ 自転車の撤去や駐輪場設置など放置自転車対策にかかる費用を、豊島区内に駅のあるJR、西武、東武、都交通局、東京メトロの鉄道5社にも負担を求める法定外目的税。各駅での年間乗車人員に対し、1千人につき740円を鉄道会社から徴収。区の対策費の約5分の1に当たる年間約2億円の税収を見込んでいる。5年間の時限立法。鉄道会社が自ら駐輪場などを設けた場合の減免措置も盛り込んでいる。

 昨年の11月区議会で同税条例案が可決、成立。12月19日に総務省の同意を得る手続きを取った。

「放置自転車税で真っ向対立 総務省が公開ヒアリング」(2004.4.9『共同通信』)

 東京都豊島区が導入を目指している法定外目的税の放置自転車対策推進税に同意するかどうかを検討している総務省は9日、課税対象となるJR東日本など鉄道会社5社と同区の担当者を呼び、異例の公開ヒアリングを行った。

 これまでの協力状況や同税の違法性の有無などについて、双方の意見は最後まで対立したままで、総務省は「互いの意見を踏まえ、(同意か不同意かを)ゼロから検討したい」としている。

 放置自転車対策への協力では、鉄道会社が出資して池袋駅近くに建てた商業施設の駐輪場について、豊島区側は「鉄道会社としてではなく商業施設の設置義務に基づく駐輪場で、区との協定で規模を拡大しただけ」と主張。鉄道会社側は「店に来る人だけでなく、鉄道利用者など幅広い住民が利用している。規模も設置義務を大きく超えており、鉄道会社としての協力の一環」と反論した。

 違憲・違法性では「放置自転車の原因は駅だけではなく、憲法の平等原則に反する」とする鉄道会社側に対し、区側は「放置自転車の圧倒的多数が鉄道利用者によるもの。平等原則には違反していない」と述べた。

「放置自転車対策税の公開ヒアリング、豊島区と鉄道5社が出席−−総務省 /東京」
(2004.4.10『毎日新聞』)

 ◇全国初、両者に対立解消求める

 総務省は9日、豊島区が全国で初めて導入を目指す「放置自転車等対策税」の公開ヒアリングを開き、課税する区側と納税義務者となるJRなど鉄道5社が出席した。自治体の新税に伴い課税、納税側双方からの同時聴取は初めて。内容は新税違法性の有無など9項目で聴取後、同省は「聴き取りを踏まえゼロから検討する。両者も円滑に協議を進めてほしい」と対立解消への努力を求めた。区は6月に自転車等駐車対策協議会の設置を明らかにし、事業者側も出席する意向を示した。【鈴木玲子】

 ◇駐輪場の整備は義務−−豊島区

 ◇費用負担強制は違法−−鉄道5社

 新税は駅周辺の自転車撤去や駐輪場設置の費用の一部をJR、私鉄、地下鉄の鉄道事業者から徴収する法定外目的税。乗車人員1000人につき740円を課税し、年間2億円強の税収を見込む。5年間の時限措置で、事業者が駐輪場を設置した場合などに減免措置をとる。

 事業者側は新税について「(放置自転車対策などを定めた)自転車法の鉄道事業者の責任は協力義務にとどまり、費用負担の強制は違法」と批判。区側は「自転車法で駐輪場整備を含む法的義務がある」と改めて主張した。

 また事業者側は「他の自治体による同様の課税が考えられ、鉄道事業に大きな影響を及ぼす。最終的には利用者に不利益がこうむる」と述べた。

 区の自転車等駐車対策協議会設置については、事業者側が「協議会は論議の前に行うべきだ。税を突きつけられたような状況での協議会設置は問題だ」と批判。区側は「各駅などで続けてきた個別協議で、事業者側は用地の無償提供など具体的な協力策を示してこなかった」と切り返した。

 自治体の法定外税新設には総務相の同意が必要で、同省は双方の主張に隔たりがあるため直接聴取した。同省は地方財政審議会を経て4、5月中に同意、不同意の判断を示す意向だ。

「放置自転車税 公開聴取」(2004.4.12『朝日新聞』)

 「違法だ」「いや適法だ」−−。9日、霞が関にある総務省6階の会議室。豊島区の「放置自転車等対策推進税」導入をめぐる同省の意見聴取で、課税対象となるJRなど鉄道5社も、同区も、これまでの主張を繰り返した。同省では「4、5月中に同意・不同意を判断したい」としているが、今後も双方から個別に意見聴取したり、資料を請求したりして、慎重に判断する方針だ。

 異例の公開聴取は午後1時から始まった。総務省からは岡崎浩巳・自治税務局企画課長、豊島区から山木仁・総務部長、鉄道5社からJR東日本の深澤祐二・投資計画部長らが出席。

 聴取項目は、(1)同税の違法性の有無(2)減免措置(3)他自治体への波及性(4)自転車法に基づく協議会の設置、など10項目に及んだ。

 双方の主張はこれまで通り真っ向から対立。同税の違法性をめぐっては、JRなどが「憲法、自転車法から違憲、違法だ」と主張したのに対し、区は「地方税法を根拠に課税はできる」と反論した。

 また、区は鉄道5社が要望してきた自転車等駐車対策協議会を、6月に設置することにしているが、「税をのどもとに突きつけておいて、協議会で話し合おうというのもいかがなものか」とJRなどは反発した。

 総務省の岡崎企画課長からは各項目について、双方にさまざまな疑問や細かな質問が出た。関係者が「オッ」という表情を見せたのは、同税の減免措置。

 鉄道会社が駐輪場を設置・運営した場合、池袋駅前でも郊外の駅前でも、一律に1台当たり4万円の減免となる点について、「地価に関係なく一律である根拠は。これでは池袋駅前の駐輪場整備が一番遅れることになるが……」。

 また、同税の波及性についても、他自治体が税収確保ではなく、豊島区とのバランスを取るための「対抗課税」という形で広がる可能性もあるのでは、との指摘もあった。

 自治体が独自に課税できる法定外税については、以前は国の許可制だったが、00年4月の地方分権一括法の施行以降、総務相の同意があれば新設できる。同意の3要件といわれるのが(1)国税や地方税と競合しない(2)地方の物流に影響しない(3)国の経済政策を妨げない。

 同税は年間10億円にのぼる同区の放置自転車対策費の一部を、区内に駅があるJR、西武、東武、都交通局、東京メトロの鉄道5社にも負担させようというもの。総務省では「3要件はクリアできているのでは」との見方が強い。

 総務省が今回、異例の公開聴取に踏み切るなど慎重な対応を取っているのも、納税者となる鉄道5社、とりわけJRが「同税を違法」とし、訴訟も辞さない構えを見せているためだ。2時間の公開聴取を終え、最後に岡崎企画課長は「ゼロから検討したい」と話し、双方に協力を改めて要請した。


 豊島区の山木仁総務部長の話 区が放置自転車税を導入する目的は、深刻化する放置自転車問題の解決に向けて、地域社会を構成する者が公平に責任と負担を分かち合う仕組みを作ることにある。不公平の是正を目的とするこの税は、関係法令に照らし何ら違法な点がないものであり、総務相の同意がいただけると確信している。


 JR東日本の深澤祐二投資計画部長の話 鉄道事業者としては、豊島区の放置自転車等対策推進税は違憲、違法なものであり、認められるべきではないと考えている。今回の意見聴取で条例の違憲・違法性など鉄道事業者の考えを十分主張できたと考えている。今後、総務省において慎重なご審議をお願いしたい。

「「ワンルームマンション税」に物申す 阿部 和義」(2004.5.21『朝日新聞』)

 東京都豊島区で6月から、ワンルームマンションを建設する業者から税金を取るようになった。地方自治体が「地方分権」の掛け声に呼応するようにいろいろな税制や条例をつくり始めており、総務省も幅広く認めている。しかし、こうした地方自治体による施策は経済の活性化に支障を与えないだろうか。長い目で見て本当に住民に良いことかどうか、判断すべきではなかろうか。

 確かに豊島区は「池袋」を抱え、いかがわしい風俗店が増加して困っているのは事実である。区内には単身世帯が多く、全世帯の56%を占めている。こうした元凶は増え続けるワンルームマンションである、として6月から税金を取ることになった。税の名前は「狭小住戸集合住宅税」ということだ。

 しかし、ワンルームマンションはすべていけないのだろうか。真面目な学生や単身赴任者で必要な人は多いはずである。こうした人にとっては、この税金は家賃や購入価格に跳ね返ってくる。具体的には、1戸あたりの床面積が29平方メートル未満の集合住宅を新築・増築する建築主に、1戸当たり50万円を課税する。8戸以下の場合は免税。豊島区は年間3700万円の税収を見込んでいる。

 ワンルームマンションが増えてくることから、それを抑えようとしてこうした税金をつくり、総務省も認めてきた。このような法定外税制をつくり特定の業者を狙い撃ちするやり方は、全国に広まってきている。同じ豊島区が実施した放置自転車税も、取りやすい私鉄やJRから取るのはいかにもおかしい。自転車を利用してメリットを受けているのは私鉄やJRだけではないだろう。この税が出来ることで、自転車屋等も打撃を受ける恐れがある。

 税金だけでなく、地方自治体の中には私がすでに書いた江東区のように、今年1月からマンション建設を規制する条例を実施しているところもある。工場が移転したり廃業したりした跡にマンションができ、学校や保育園が足りなくなったため条例をつくった。工場が移転した後、困った区はマンションの誘致などをしてきたのに、マンションができすぎたら急に態度を変えたということで不動産協会は区に抗議した。土地を買った不動産会社は手持ちの土地の処分に困ってどうするか、思案投げ首である。長野県軽井沢町では、高さ2階以下にして1棟を20戸を上限にするマンション規制の要綱を決めている。

 横浜市では、全国で初めて6月から地下室マンションとその住環境をの調和を図ることを目的とした「傾斜地における地下室建築物の建築及び開発の制限などに関する条例」を実施する。地下室マンションの建設の規制であり、川崎市も追随するという。

「放置自転車税問題、豊島区に鉄道5社との協議要請」(2004.5.25『朝日新聞』)

 東京都豊島区が全国初の導入をめざしている「放置自転車等対策推進税」について、総務省は24日、同区に対し、納税義務者となるJRなど鉄道5社と放置自転車対策についてさらに話し合うよう求める方針を決めた。近く麻生総務相名で要請する。

 自治体が独自に課税する法定外目的税の実施には総務相の同意が必要で、同省は5月中にも判断を示す方針だったが、結論は当面、先送りされる見通しになった。

 放置自転車税は、自転車の撤去など放置自転車対策にかかる費用について、豊島区内に駅のあるJR、西武、東武、都交通局、東京メトロの5社に負担を求めるもの。区内の各駅での年間乗車人員1千人につき740円を鉄道会社から徴収し、年間約2億円の税収を見込んでいる。

 昨年12月の区議会で同税の導入を認める条例が成立、区側は12月に同意を求める協議書を総務省に提出したが、鉄道5社がこれに反発。総務省は4月、区・鉄道会社双方から、公開でそれぞれの「言い分」を聞いたが、調整は不調に終わり、対立が続いている。

「「鉄道側と再協議を」豊島区の自転車税」(2004.5.27『朝日新聞』)

 豊島区が全国初の導入を目指している「放置自転車等対策推進税」について、総務省は26日、同区に対し、課税対象のJRなど鉄道5社と再協議するよう総務相名で要請した。事実上の「判断の先送り」で、「豊島区vs.鉄道5社」は6月下旬に区に設置される「自転車等駐車対策協議会」に舞台を移すことになった。

豊島区「憤り」

 区は26日夕に開かれた区議会の全員協議会で、担当課長が経過を報告。議員からは「地方分権の流れの中、課税自主権に対する国の介入だ」「国は地方議会の議決を軽視するのか」などと批判の声が上がった。

 高野之夫区長は「この税は区の法定外税検討会で議論を尽くし、議会の議決を経て、自治体の意思として成立した」とし、「総務省の今回の対応が、判断を先延ばしするものであれば、強い憤りを覚える。新税の同意を求める考えは変わらない。よく検討して対応を決めたい」と話した。

総務省は反論

 「今回の要請は鉄道会社に厳しい話。具体的な協力を迫られることになるんだから」と、自治税務局では「先送り」との批判に反論する。「協議会で鉄道会社から一定の協力が取り付けられれば放置自転車対策は前進するし、非協力的な姿勢のままなら区の主張が説得力を持ち、新税同意の環境が整う」との理屈だ。

 麻生総務相はそもそも、新税構想について「税金でやる話なのか」と漏らしていた。再協議を求めた理由を記者会見で「まずは協議会できっちり話をしていただくという形だと思う」と説明した。「できれば当事者間の話し合いで決着してくれれば」。判断は避けたい空気が省内にあるのも事実だ。

慎重論のJR

 総務省の今回の要請について、社内では「国は新税に同意しないのではないか」という楽観論よりも、「税の構想が撤回されるまで安心できない」との慎重論が根強い。

 今月に入り、区から「協議会を開きたい」との連絡があった。「新税構想が撤回されない状態での協議会の開催は遺憾」としつつも、「放置自転車問題は自転車法にのっとって対応していく。協議会でも税の撤回を主張したい」(投資計画部)としている。

「「放置自転車対策税」導入、総務相に「早期同意を」−−豊島区が要望書 /東京」(2004.6.15『毎日新聞』)

 「放置自転車等対策推進税」の全国初の導入を目指す豊島区は14日、麻生太郎総務相に同税への速やかな同意を求める高野之夫区長の文書を総務省に提出した。麻生総務相が5月26日に出した区への意見書に対する回答。総務相は、課税される鉄道事業者との協議を尽くすことを求め、協議の間は同意・不同意の判断の見合わせを提案していたが、区は「長期にわたる判断の先延ばしは、地方自治体の自己責任に基づく意思決定の意義と重さが失われる」と先延ばし案の撤回を求めた。

 区は文書で、これまで膨大な経費をかけて放置自転車対策を進めてきたが、区内の池袋駅、大塚駅は都内ワースト1、2位となる深刻な状況だと説明。厳しい財政事情のもとでは、鉄道事業者の責任をあいまいにしたまま、これ以上の対策を講じるのは困難だと主張した。

 高野区長は会見で、JRなど鉄道事業者を含めた自転車法上の自転車等駐車対策協議会の初会合を30日に開くことを明らかにした。しかしそこでの協議は、税とは別の問題だとして「同税は鉄道事業者も加わって1年4カ月、十分に論議を尽くし、議会の審議を経て決めた」と話した。また同協議会で鉄道事業者が、区の対策に具体的に協力した場合には、区は同税の減免で対応する考えを示した。

 豊島区議会も総務相に早期同意を求める区と同様の意見書を11日に議決しており、14日に総務省に送付した。

 これに対し、総務省は「よく読んで検討したい」と話している。【前田博之】

「放置自転車税 総務省判断 『自治体の意思軽視』」(2004.6.15『東京新聞』)

 「全くの予想外で国の要請には応じられない」−。豊島区の法定外目的税「放置自転車等対策推進税」をめぐり、総務省が区に課税対象になる五鉄道事業者との継続協議を求め、同意・不同意の判断を見送ったことに、高野之夫区長は十四日会見し、不快感をあらわにした。条例成立から約半年。地方自治体の意思決定の意義を強調しながら、総務省に対し、強く同意するよう促した。 (中村 守孝)

 会見した高野区長は「地方分権を進める総務省が判断を先延ばしにすることは、地方自治体の自己責任に基づく意思決定の意義と重さが失われる」と、怒りをぶつけた。区はこの日、総務相に意見書を提出した。

 同税を実施するための条例は昨年十二月の区議会で成立、同月十九日には同省に協議を申し出ている。協議期間は一般に「三カ月程度」とされるが、すでに約半年が過ぎた。高野区長は「総務省の判断保留は全く予想外で驚き。落胆を覚えた。速やかに同意の判断をすべきだ」と主張した。

 一方で区は、総務省が「継続協議の場」として要請した「自転車等駐車対策協議会」を今月三十日に設置するが、これについて高野区長は「この協議会は鉄道事業者から要請があり、設置は当初からの予定通り。新税とは関係ない」と同省の要請との関連を否定した。

 同省自治税務局企画課では「意見書をいただいたばかりで、どうするかはこれから検討する。ただ区の意見書を尊重して、何らかの対応はしたい」と話した。

「豊島区 自転車対策協始まる」(2004.7.1『東京新聞』)

 放置自転車問題を検討する豊島区の区自転車等駐車対策協議会が三十日、区役所で初めて行われた。

 協議会は高野之夫区長の諮問機関。二〇〇五年度末までをめどに、放置自転車対策にかんする区の総合計画を策定する。

 協議会には、委員として区内に駅のある五鉄道事業者、学識経験者、区議、区民、関係機関などから二十六人が参加。この日は会長、副会長の選任と放置自転車対策の現状報告、分科会の設置などを行った。

 区が導入を目指す法定外目的税「放置自転車等対策推進税」をめぐっては、総務省が課税対象となる五鉄道事業者と放置自転車対策の「継続協議の場」として、協議会の設置を要請している。あいさつした高野区長は「新税の観点と切り離して議論してほしい」と述べ、総務省が要請する協議会とは異なる会であることを強調した。

「全国初の放置自転車税、豊島区に同意へ 総務省方針」(2004.9.5『朝日新聞』)

 総務省は5日、東京都豊島区が全国初の導入を目指している法定外目的税「放置自転車等対策推進税」について、同意する方針を決めた。近く地方財政審議会の意見を聞いたうえで、麻生総務相が正式に同意する。ただ、税を負担する鉄道会社側が強く反発していることから、区に対して、鉄道会社の理解を得るよう努力を求める異例の意見書も付ける予定だ。

 放置自転車税は、池袋駅周辺などに放置された自転車の撤去や、駐輪場の整備にかかる費用の負担を、JR、西武、東武、都交通局、東京メトロの鉄道5社に求めるもの。豊島区は年間約2億円の税収を見込み、来年度からの実施を目指している。

 昨年12月に新税導入を認める区条例が成立したことを受けて、区は同意を求める協議書を総務省に提出した。しかし、鉄道5社が反対したため、総務省は当事者間で話し合いを続けるよう促し、同意・不同意の判断を先送りしていた。

 ところが、区は6月に「地方税法に則し、速やかに同意の判断を」と求める文書を総務相に提出。地方税法で「二重課税で納税者の負担が著しく重い」といった問題がない限り、「国は同意しなければならない」と定められていることから、総務省は最終的に同意せざるを得ないと判断した。

「先送り一転 残る火種」(2004.9.6『朝日新聞』)

 豊島区が全国初の導入を目指している「放置自転車等対策推進税」について、総務省は「同意」する方針を決めたが、同省の対応はまさに「紆余曲折うよきょくせつ」。5月に「判断先送り」をしたかと思えば、急きょ意見書付きの「同意」に転じた。省内に何があったのか。一方、JRなど鉄道5社は訴訟の構えを崩しておらず、「課税」騒動はまだまだ続きそうだ。


総務省

 「そもそも税でやる話なのか、という気はするが……」。麻生総務相は同税への対応を協議する省内の打ち合わせで、そう漏らしていた。「同意」はするものの、異例の「意見書」付きとなった背景には、麻生氏の意向が強く反映されている。

 省内にも慎重論を抱えながら、「同意」にかじを切ったのは、地方分権推進の流れの中、「(自治体の課税自主権を広く認めている)地方税法のもとでは、国として同意せざるを得ない」(同省幹部)との判断からだ。

 同省にとって誤算だったのは、5月に総務相名で豊島区に対し、鉄道5社との再協議を要請した直後、高野之夫区長が「再協議と『同意』は別次元」として、「速やかな判断」を求めてきたことだ。「鉄道事業者の協力が得られなければ新税に同意しやすくなるし、当事者間で話し合いが進むかも知れない」という期待が同省にはあったが、もくろみは崩れた。9月末に内閣改造が控えていることも、この時期の決定を後押しした。

 全国初の同税が今後、どんな波紋を広げるのか。同省も読み切れていない。鉄道5社が訴訟を起こす可能性が高いうえ、経済界や与党の反発が強まれば、地方の課税自主権そのものを制限する動きが活発化しかねないとの心配もある。

JR東日本

 同税が導入された場合、課税対象となるJR東日本。総務省からは、区との再協議の間は「同意」「不同意」の判断をしないとの方針を聞いていただけに、「区が設置した協議会での話し合いも始まったばかり。今後2年ぐらいかけて話し合おうとしているのに、なぜ、この時期に『同意』するのか分からない」と当惑の声が広がっている。

 大塚陸毅社長は、6月の定例会見で「区の制度そのものに反対」「区が税を強行するのであれば、対応を考えなければならない」と強調。訴訟も視野に入れた方針であることに変わりがない、としている。

豊島区

 豊島区の幹部は「総務省から正式な連絡はないので何とも言えない」としながら、「『同意』の方針が決まったのであれば喜ばしいことだ」とホッとした表情。

 総務相の要請による協議会を6月に設置し、鉄道5社との再協議の場に臨んできたが、「JRなどの時間稼ぎに利用されている感じ」。21日の協議会で鉄道5社から具体的な協力案が提示されない場合は、「総務省の『不作為』を問う法的な措置も検討しなくては、と考えていた」という。

 区は来年度から同税を施行したい意向だ。JRなどが訴訟を起こすのは必至と見て弁護団など準備を急ぐ予定だ。


 放置自転車等対策推進税 駐輪場設置など放置自転車対策にかかる費用を、豊島区内に駅のあるJRなど鉄道5社にも負担を求める法定外目的税。各駅での年間乗車人員に対し、1千人につき740円を徴収、年間約2億円の税収を見込んでいる。

 昨年の11月区議会で同税条例が成立。12月に総務省の同意を得る手続きを取った。麻生総務相は今年5月、判断を棚上げし、区に対し、自転車法に基づく自転車等駐車対策協議会を設置し、同税反対の鉄道5社と再協議するよう要請していた。

「「放置自転車税」:総務省が導入同意「鉄道会社と十分協議を」−−異例の意見書付け」(2004.9.14『毎日新聞』)

 総務省は13日、東京都豊島区が協議を申し出ていた「放置自転車等対策推進税」の導入に同意した。区内に駅があるJR東日本など鉄道会社5社が納税者となる法定外目的税で、駐輪場の整備などの放置自転車対策に使う。鉄道会社は強く反対しているため、総務省は鉄道会社と十分に協議するよう求める異例の意見書も出した。鉄道会社に負担を求める法定外目的税は、導入されれば全国初になる。

 新税は前年度に区内の駅から乗った乗客1000人につき740円を課税し、年間2億1100万円の収入を見込んでいる。区議会で昨年12月、条例が可決された。地方税法は法定外税について「他の税と重なる」などの問題がなければ、総務省は同意しなければならないと定めている。

 意見書は「豊島区と鉄道会社の見解がほぼ全面的に対立したままで、両者の協議や相互理解が十分に進んでいるとは言い難い」としたうえで、同区に対し、鉄道会社の理解を得るよう格段の努力を行うことや放置自転車対策を進め、課税のあり方を見直すよう求めた。

 これまで「鉄道会社は駐輪場の整備に協力しなかった」と主張する区と「(放置自転車対策を定めた)自転車法は鉄道会社の責任を協力義務にとどめている」と税に反対する鉄道会社側が対立。総務省は今年5月にも、区に自転車法に基づく協議を尽くすよう求める意見書を出すなどしていた。【宮田哲】

 ◇課税時期、明言避ける−−豊島区長

 放置自転車等対策推進税の同意について、豊島区の高野之夫区長は13日「区の主張が認められたことに他ならない」と評価したが、早ければ05年度からとしていた課税時期については慎重に判断する姿勢を見せた。JR東日本など課税対象の鉄道会社5社は「大変遺憾で理解しがたい」との談話を発表し、白紙撤回を求め、訴訟などの検討を始めた。

 区役所で記者会見した高野区長は異例の意見書について「真摯(しんし)に受け止めたい」と述べ、課税時期については明言を避けた。今後、放置自転車対策に対する鉄道会社側の協力の度合いなどを見極めて課税時期を判断するとみられる。

 JR旅客6社と日本民営鉄道協会73社、日本地下鉄協会40社局も同日「新税導入は承服できない」との反対声明を出した。【鈴木玲子、斎藤正利】

「放置自転車税 総務相が豊島区に同意」(2004.9.14『東京新聞』)

 麻生太郎総務相は十三日、東京都豊島区の法定外目的税「放置自転車対策推進税」の新設に同意し、高野之夫区長に同意書を手渡した。放置自転車対策で鉄道会社に課税する法定外税は初めて。

 同税をめぐっては、課税される鉄道会社側が「課税の公平性の観点から違法」と強く反発。導入された場合は提訴する構えを崩していないことから、麻生総務相は同意に当たり「納税者(鉄道会社側)からの指摘や批判を受け止め、協議・調整を十分に行って理解を得るようさらに格段の努力を行うこと」とする異例の意見書を添えた。

 放置自転車税は、区内に駅を持つJR東日本など鉄道五社に乗客千人当たり七百四十円を課税。年間約二億円と見込む税収は、自転車撤去や駐輪場整備などの対策費用に充てる。

 同税について総務省は五月、鉄道会社側との協議を続けて課税以外の方策を探れないかを区側に提案。その間は同意・不同意の判断を見送るとしていたが、区が提案を拒否し速やかな同意を求めたため、あらためて検討を進めていた。

 豊島区では、法定外税としてほかに、ワンルームマンションの建築抑制を目的とした法定外普通税「狭小住戸集合住宅税(ワンルームマンション税)」を六月から全国で初めて施行している。

「放置自転車税総務相が同意 『一歩前進』と豊島区長」(2004.9.14『東京新聞』)

 豊島区が導入を目指している法定外目的税「放置自転車等対策推進税」について十三日、麻生太郎総務相が同意したことに対し、高野之夫同区長は会見して「一歩前進した。豊島区の主張、考え方が認められた」と歓迎した。

 総務省が「納税者である鉄道事業者と十分な協議を行い、理解を得るよう努めること」などとする異例の意見書を添付したことについて、高野区長は「『努力しろ』と言われたのだから、いきなり正面衝突ではなく、われわれも努力しなければならない」と、意見書に配慮する意向を示した。

 ただ、吉川彰宏税務課長が「鉄道業者は、依然として放置自転車対策に非協力的。同意をもらった以上は条例の施行が前提」と話し、従来の方針に変化はないことを強調した。

 施行時期について高野区長は「意見書を踏まえ、議会とも相談しながら慎重に判断したい」と明言を避けたが、来年度からの課税が可能となるよう、早ければ本年度中の施行を目指す考えだ。

 JR東日本など、課税対象となる鉄道五社は同日「区との協議段階で同意が出されたことは非常に遺憾。条例の撤回を求める立場に変わりはない」とするコメントを発表した。

  (大原 啓介)

「区長、施工時期明言せず」(2004.9.14『朝日新聞』)

 豊島区が全国初の導入を目指している「放置自転車等対策推進税」について、総務省は13日、異例の意見書付きで「同意」をした。記者会見した高野之夫区長は施行時期について明言せず、当面は課税対象のJRなど鉄道5社との協議に力を注ぐ姿勢を強調した。一方、鉄道5社は実施の場合、訴訟を起こす姿勢を崩していない。


 意見書は「区は、課税対象の鉄道会社から提起されている指摘や批判を真摯しんしに受け止め、理解を得るよう格段の努力を行うこと」とし、「協議・検討を尽くし」たうえ、「課税のあり方について必要な見直しを行うこと」などとしている。

 高野区長は記者会見で「鉄道会社の協力が得られるよう粘り強く協議を続けていきたい」と話した。施行時期について、これまでは「今年度に施行」としていたが、「今後、慎重に判断したい」と述べ、「協議に力を注ぐ」姿勢を示した。だが、ある幹部は「意見書を尊重しての判断。協議に進展がないようなら」と、今年度中の施行をにじませる。

 一方、JR東日本、東武、西武、東京メトロ、都交通局は、あくまで「撤回を求める。税が鉄道各社の同意なく強行されれば、訴訟も視野に入れて対応する」という姿勢だ。

 ただ、仮に税が年度内に施行されても、各社の納税期限は06年1月になる見込みで、訴訟を起こすとしても、まだ時間がある。JR東日本のある幹部は「この期間の協議に期待したい」とも話す。

 また、日本民営鉄道協会(73社)、日本地下鉄協会(40社局)とJR旅客6社はこの日、「同条例はほかの自治体に波及する可能性が高く、鉄道事業者に与える影響は甚大。総務省の『同意』は到底、承服できない」との共同コメントを出した。

 同税は、駐輪場設置など区の放置自転車対策のかかる費用を、区内に駅のある鉄道5社にも負担を求める法定外目的税。各駅での年間乗車人員に対し、1千人につき740円を徴収するというもの。年間約2億円の税収を見込んでいる。

「JR、用地提供を提案 大塚駅周辺4カ所に−−豊島区の放置自転車対策協 /東京」(2004.9.22『毎日新聞』)

 ◇1300台分の駐輪場

 放置自転車対策総合計画策定のための「豊島区自転車等駐車対策協議会」第2分科会が21日開かれ、JR東日本は大塚駅周辺4カ所に約1300台分の駐輪場用地提供を提案した。駐輪場設置をめぐってJRがこれほど具体的な協力策を示すのは初めて。区が全国初の導入を目指す「放置自転車等対策推進税」への総務省の同意後初の分科会で、鉄道5社の姿勢が焦点ともなっていた。

 大塚駅は放置自転車台数が都内ワースト2。区は同駅周辺の駐輪不足台数を1300台と算定し、鉄道会社に駐輪場設置への協力を求めている。

 JRは▽区の大塚駅前駐輪場計画への用地提供▽駅周辺の軌道両側ののり面約600平方メートルに2段式の駐輪場設置で900台▽区に無償提供している駐輪場(170台)を2段式に改良し80台増▽別ののり面への設置で120台−−などと示し、1300台の確保は十分可能とした。ただし「用地提供は検討するが、駐輪場設置はあくまで行政」と付け加えた。

 分科会後、JR東日本東京支社の松田芳隆企画室長は「世の中の流れもかんがみ、出来ることは具体的に示そうということ。新税撤廃を求める立場は変わらないし、提案による税の減免措置も想定していない」と話した。

 一方、区の水島正彦助役は「想定より踏み込んだ協力策を示した。ただ用地提供はするが、駐輪場を造るのは自治体というのはどうか。しかし個々の具体策を協議したいという姿勢は評価したい」と一定の理解を示した。【鈴木玲子】

「豊島区が外部監査廃止 条例案可決へ 『財政難でやむを得ず』」(2004.10.2『東京新聞』)

 豊島区議会総務委員会は一日までに、区から提出されていた外部監査制度を廃止する条例案を可決した。条例案は本会議に上程され、二十七日に可決される見込み。区行政経営課では「財政難のためやむを得ない」としており、行政の無駄を省くための制度が財政難を理由に廃止される、異例の事態となった。同課によると、二十三区で廃止になるのは初めてという。 (大原 啓介)

 区は定例議会に提出した補正予算案に、外部監査委託料五百万円の全額減額を盛り込んでいる。

 同制度は一九九七年の地方自治法改正で制度化され、都道府県、政令市、中核市に導入が義務付けられている。

 同区は二〇〇〇年四月、二十三区で初めて同制度を導入した。委託契約を結んだ公認会計士や監査法人が、区や外郭団体の財務会計を監査し、結果を毎年区長と議会に報告している。〇一年二月に行われた初の報告では、外郭三団体の無駄遣いを指摘するなどしている。

 同課では「外部監査の効果を数字で示すことは困難だが、これまでに一定の成果を上げてきたことも事実。しかし、主だった問題点についてはすでに指摘を受けており、区の財政状態を考えると緊急避難的に廃止せざるを得ない」としている。財政が健全化すれば、復活も検討するという。

 同区は、財政の健全性を表す経常収支比率が、〇三年度決算で二十三区中十九位。本年度中の行財政改革プラン策定を目指している。

 都行政監察室によると、二十三区で外部監査制度を導入しているのは、豊島区のほか、港、文京、目黒、杉並、荒川、足立、世田谷の各区。足立、世田谷区は本年度から導入している。

「放置自転車税 課税実施1年延期」(2004.10.28『朝日新聞』)

 豊島区が全国初の導入を目指している「放置自転車等対策推進税」について、高野之夫区長は27日、課税対象の鉄道5社と十分に協議するため、「予定より1年遅らせ06年度から実施する」と表明した。導入延期は、これまで同税導入に突っ走ってきた同区が、「和戦両様」の対応に方針転換したといえそうだ。

 同税は、池袋駅周辺などの放置自転車対策にかかる区の費用(年間10億円)の一部(同2億円)をJR東日本、東武、西武、東京メトロ、都交通局に求めるもの。鉄道5社は強く反発。麻生総務相が9月13日に同税導入に「同意」したが、「鉄道会社と十分協議するよう」との異例の意見書が付いていた。

 区は、6月に設置した自転車等駐車対策協議会の場で鉄道5社と協議を重ねており、協議会は06年度初めに「駐車対策の総合計画」を策定する予定だ。鉄道会社から具体的な提案があるかどうかを見極めるため、同税の実施を同年度に延期することにした。

 延期について、高野区長は「やはり意見書の存在が大きい」と話す。意見書には「区は批判を真摯しんしに受け止め」「課税のあり方については必要な見直しを」などの厳しい言葉が並び、予想を超える内容に区幹部の間にショックが走ったという。

 「1年の協議期間を置くことで鉄道会社には一定の配慮をした。必要なら各社の社長のところに私が赴き、問題の解決を図りたい。駄目なら税を導入するしかない」と高野区長。

 10月区議会最終日のこの日。議員協議会で説明した区幹部からは「今後の協議で、鉄道会社から課税効果を上回る協力が得られた場合、同税の廃止も含めた税制変更もありうる」という言葉も飛び出した。

 これまで法律的な手続きを踏み、いわば「正面突破」で同税導入を進めてきた同区。「廃止」とか「税制変更」とかの言葉が区幹部から語られるのは初めてだ。鉄道会社との協議に向けた発言と受け止められている。

「放置自転車税:2760台分の駐輪用地を豊島区へ提案−−鉄道側 /東京」(2005.11.8『毎日新聞』)

 ◇放置自転車の解消で目的税

 鉄道事業者に課税する独自の「放置自転車等対策推進税」を制定した豊島区で7日、放置自転車対策総合計画を作るための「豊島区自転車等駐車対策協議会」第2分科会が開かれ、JR東日本など鉄道事業者と道路を管理する国、都は、新たに2760台分以上の駐輪場用地の提供を提案した。数字を示していない提案もあるため台数はさらに増える見込み。区民代表の委員からは鉄道側の努力を評価する意見も出ている。

 鉄道事業者から新規に提案があったのは池袋(JR東、東京地下鉄、東武)、大塚(JR東)、巣鴨(JR東)、東長崎(西武)、椎名町(西武)の5駅周辺8カ所。JR東日本は大塚駅南口の地下に約1500平方メートルの駐輪場確保を、また西武鉄道は東長崎駅の駅舎改良工事に合わせて約600台分の整備を提案した。

 鉄道事業者の整備は計2510台以上となり、国や都は道路の中央分離帯を削るなどで計4カ所250台の駐輪場用地を新たに作り出すという。すでに駐輪場に提供し、そのまま継続を表明した部分を合わせると計4099台以上になる。

 区は今後10年間で6500台分の駐輪場新設を目標として掲げており、7日の新たな提案で4割強を確保したことになる。出席した区民代表の委員からは「提示された資料は素晴らしい内容。協力に感謝しお礼を言いたい」との声も出た。

 協議会はこの日の提案を基に、今年度中に区長に10年計画の素案を答申する予定だ。

 法定外目的税の「放置自転車等対策推進税」は、協議会の審議を見極めるため、鉄道会社への課税は1年延期され06年度からの予定。条例では駐輪場設置や区に駐輪場用地を提供した場合、税の減免を定めている。

 協議会では区議の委員から「このまま順調に推移するならこの税の役割も終わったのでは」という質問も出たが、増田良勝・区土木部長は鉄道事業者の提案を評価しながら「今後、さまざまな検討が加えられる時期がくるかと思う」と話すにとどまった。【若井耕司】

「全国初の放置自転車税、廃止へ 豊島区」(2006.2.22『朝日新聞』)

 東京都豊島区の高野之夫区長は21日、区議会の答弁で、全国に先駆けて導入した「放置自転車等対策推進税」について、初めて「廃止も選択肢」と述べた。「6月に条例廃止の見込み」(区幹部)という。

 鉄道5社が最近になって、駐輪場用地の無償提供などを提案。区全体の整備目標約6500台のうち、半分以上を鉄道会社の提供用地で整備可能となったことから方針転換したとみられる。

 同税は、区内に駅がある鉄道5社に対し、乗客1千人につき年間740円を課税し、放置自転車対策に充てる法定外目的税。放置自転車都内ワースト1の池袋駅などがあり、新年度から実施の方針だった。

「豊島区、放置自転車税廃止へ「痛み分け」」(2006.2.22『朝日新聞』)

 全国初の放置自転車税を廃止へ――豊島区の高野之夫区長が21日、区議会の一般質問の答弁で、「鉄道事業者の協力提案を高く評価しており、税条例の廃止も選択肢だ」と述べ、「放置自転車等対策推進税」の廃止を初めて示唆した。放置自転車対策の総合計画が策定される6月に廃止の見込みだ。「訴訟も辞せず」とのJRなど鉄道会社の反対で2年余も紆余曲折(う・よ・きょく・せつ)した同税は、双方の「痛み分け」といった形で決着がつきそうだ。

 木下広区議(公明)の同税に対する質問に、高野区長が答えた。

 答弁の中で、高野区長は現在、自転車等駐車対策協議会で協議している鉄道事業者の協力内容について、「自転車法の制定以来、鉄道事業者の協力がここまで具体的かつ大量に総合計画の内容に盛り込まれることは全国でも初めてであり、高い評価をしている」と述べたうえで、「区議会の意見もたまわり、税条例の廃止も選択肢として考えたい」と答えた。

 高野区長が、条例の廃止にまで踏み込んだ発言をしたのは初めて。

 区幹部は「同条例の廃止を示唆したということだ。6月に策定される総合計画の中で、JRなど鉄道会社の協力内容が確定される。これが法的な拘束力を持つと判断した。6月区議会にも諮り、正式に決まることになる」と話した。

 これに対し、JR東日本は「放置自転車問題は、税金ではなく、自転車法に基づき解決を図るべきだという鉄道事業者の主張が理解されたものと考えている。しかし、条例廃止が確定したわけではなく、引き続き廃止を求めていく」とのコメントを出した。

 同税は、駐輪場など放置自転車対策にかかる区の費用(年間約10億円)を、区内に駅のあるJR、東武、西武、東京メトロ、都交通局の5社にも負担を求める法定外目的税。年間約2億円の税収を見込んでいた。放置自転車が都内でワースト1の池袋駅を抱える同区の苦肉の策だった。

 だが、課税対象となる鉄道5社の反対で、04年9月に総務相から税施行の「同意」を得たものの、区は実施時期を1年延期。06年度から徴収の方針だった。

 この間、自転車法に基づく同協議会が設置され、鉄道5社が次々と「駐輪場用地の無償提供」などを提案。区の整備目標6500台のうち4千台を鉄道会社の協力で確保できる見通しになり、区議会などで「条例を廃止してもいいのでは」との声が上がっていた。

 区のある幹部は「この条例ができる前は、放置自転車に対する鉄道会社の協力は極めて消極的。その意味で言えば、目的を達成することができた」と話している。

「放置自転車税廃止も 豊島区 鉄道事業者の対策評価」(2006.2.23『東京新聞』)

 駅前の放置自転車を減らすため、鉄道事業者に課税する法定外目的税を条例で定めている豊島区の高野之夫区長は二十二日までに、条例の廃止も含めた見直しの検討を始めた。

 同税は二〇〇六年度から課税を始め、年約二億円の税収を見込んでいたが、鉄道事業者側が強く反発していた。高野区長は「鉄道事業者の協力提案を評価しており、廃止も選択肢」との考えを示した。

 区交通安全課は「目的は税収増ではなく、放置自転車を減らすこと。事業者が十分な対策を講じてくれるのなら新税は必要ない」と話している。

 同区は池袋駅と大塚駅という都内放置自転車ワースト1位と2位の駅を抱え、撤去費用など年間約十億円の対策費を要している。このため区内に駅があるJR、東京メトロ、東武、西武、都交通局の五事業者に乗車人数に応じて課税し、駐輪場の整備など対策に応じて減免することにしていた。

 これに対し、事業者側は「税金で放置自転車対策をするのは間違い」と反発。一方で、事業者と区でつくる「自転車等駐車対策協議会」では昨年末、駐輪場用地を無償で提供することや、新たな駐輪場を整備することを提案、大きく歩み寄りを見せた。

 提案が実現すれば、減免措置により課税額が大幅に減少する上、区が目標としていた駐輪場六千五百台分のうち、事業者側の協力だけで四千台が確保できる。

 同協議会の答申は三月末にも高野区長に報告される見通し。区長は、対策が十分と判断すれば区議会に税条例の廃止を諮る。

 同課の広瀬陽一係長は「新税は鉄道事業者に強く反発されはしたが、税条例が制定されたことでそれまで消極的だった事業者側の対策や区への協力を促したことは間違いない」と話している。

「豊島区:自転車駐車対策協、計画案を区長に答申−−目標台数の確保など /東京」(2006.3.28『毎日新聞』)

◇鉄道側から用地提供、目標台数の確保など

 「豊島区自転車等駐車対策協議会」(太田勝敏会長)が27日開かれ、放置自転車対策総合計画案を了承し、高野之夫・豊島区長に答申した。JR東日本など5鉄道事業者から約4000台分の駐輪場用地の提供を受けるなど、今後10年間での整備目標6500台分を確保できる内容となっている。

 答申を受けた後、高野区長は区の法定外目的税「放置自転車等対策推進税」に触れ、改めて鉄道事業者の貢献を評価。「できるだけ早い時期に対処する」と述べ、実際の課税をせず、6月の定例議会での条例廃止を示唆した。

 区は実際に徴収した場合の税収を5年間で11億円と試算。駐輪場用地の提供など答申に盛り込まれた鉄道事業者の貢献を金額に換算するとその2・7倍程度と計算している。

 同協議会は04年6月に自転車法の規定に基づき区が設置。区民や区議、鉄道事業者などで構成し、06〜15年度の10年間の総合計画を作ってきた。

 区は放置自転車対策費用の負担を鉄道事業者に求めた税収を来年度の一般会計予算案に計上しているが2月、高野区長は区議会の一般質問に答えて鉄道事業者を評価し「条例の廃止も選択肢に考えたい」と発言していた。

 総合計画は4月中旬から5月中旬まで区民らの意見を聞く「パブリックコメント」を経て、6月中に策定する。【若井耕司】

「放置自転車税:豊島区が課税廃止の方針 駐輪場確保にめど」(2006.4.14『毎日新聞』)

東京都豊島区の高野之夫区長は14日、法定外目的税「放置自転車等対策推進税」を廃止する方針を明らかにした。駅前に放置される自転車の撤去費や駐輪場整備費の負担を今年度からJR東日本など鉄道5事業者に求める予定だったが、駐輪場の確保にめどが立ったため課税を取りやめる。6月定例区議会に条例廃止案を提出する。

 条例は03年12月の区議会で可決。区内で営業する鉄道事業者から5年間で11億円の収入を見込んでいたが、事業者側から駐輪場用地の提供申し入れなどがあり、課税の必要性がなくなったと判断した。高野区長は「鉄道事業者の協力は大きい。街づくりの一つの形を示すことができたと思う」と話している。【若井耕司】

「放置自転車税 徴収なく 廃止」(2006.4.15『東京新聞』)

 駅周辺の放置自転車対策として鉄道事業者に対し、法定外目的税「放置自転車等対策推進税」を設けていた東京都豊島区は十四日、税条例を廃止すると発表した。区が五年間の整備目標としている駐輪場六千五百台分のうち、約四千台分の用地などを鉄道事業者側が無償提供することで合意。区は「課税よりも効果的な仕組みができた」と判断し、廃止を決めた。

 同税は区内に駅があるJR東日本、東京メトロ、東武、西武、都交通局の五事業者に乗車千人当たり七百四十円を課税。税収を自転車の撤去費用などに充てようと、本年度から課税し、年二億一千万円の税収を見込んでいた。事業者側は新税に強く反発する一方で、用地提供などの歩み寄りを見せていた。

 会見した高野之夫区長は「区と事業者は敵味方に分かれていたが今後は信頼関係に基づいてまちづくりをしていきたい」と述べた。JR東日本は「放置自転車問題は税金ではなく(鉄道事業者の協力義務を定めた)自転車法で解決を図るべきだという主張が理解された。今後も可能な協力をしていく」とコメントしている。

「豊島区が放置自転車税廃止へ 名より実を取る」(2006.4.15『東京新聞』)

 紆余(うよ)曲折の末に廃止が決まった、豊島区の放置自転車対策税。全国初の試みとして注目を集めながら、税金を取られる鉄道事業者側から強い反発を受け、実際の課税には至らなかった。しかし区は、金額にして約三十億円に相当する駐輪場の用地や施設の無償提供を引き出した。いわば名を捨てて実を取った区に対し鉄道事業者側も、こうした課税が他の自治体にも広まることを懸念していただけに、面目も立った形だ。

 今回、区が税条例廃止を決めた最大の理由は、課税対象となったJR東日本、東京メトロ、東武、西武、都交通局の五者が、区内五駅の周辺の土地や施設などを、原則無償で提供することを決めたことだ。この提供分は区の五年間の税収見込み約十一億円の二・七倍に相当する。区は課税よりも実効性があると判断した。

 西武鉄道の広報担当者が「新税導入が一石を投じ、事業者の協力が進んだという側面はある」と認めるように、提供用地分だけで、四千台の駐輪場が今後整備される。

 今回の廃止について、区の担当者や区議の多くは「そもそもの目的は税収ではなく、放置自転車を減らすことだった」と理解を示す。

 ただ、今回の決着が、放置自転車問題の解決に直結するわけではない。完成した駐輪場が十分に利用されて初めて、放置自転車が減るからだ。

 高野之夫区長は「駐輪場について周知徹底を図るなど、自転車利用のルールを守ってもらえるようにしなければならない。これからが正念場」と話していた。 (吉田 宇洋)

「豊島区、放置自転車税廃止」(2006.4.15『朝日新聞』)

 豊島区の高野之夫区長が14日、記者会見し、全国初の「放置自転車等対策推進税」の廃止を正式に表明した。これまでに鉄道5社が提案した協力内容を換算すると「予定した税収の約2・7倍以上で、全国でも画期的なもの」と位置づけた。駅前の放置自転車対策に悩む他自治体からは「評価できる」との声が相次いだが、鉄道5社は「今後は自転車法にのっとり協力」とのコメントを出しただけだった。

 この日、会見で高野区長は、「税収を大幅に上回る額を算出することができ、一つの目的は果たした」と述べた。

 区によると、JRなど鉄道5社が無償提供する土地は、実勢価格では30億円。区が06年度から5年間で見込んでいた自転車税による税収11億円の2・7倍以上になる。また、今後10年間の区の駐輪場の整備目標6500台のうち、4千台が確保できる見込みだという。

 高野区長は「鉄道会社からの協力がほとんどゼロの状態から、おたがい最後は腹を割って話し合い、こういう結果を得られたことは、同じように、放置自転車に苦慮している全国の自治体にとって、いい影響を与える例となったのではないか」とした。

 豊島区同様、駅前の放置自転車に悩まされている自治体は、今回の決定を“現実的な判断”と見ており、影響についても評価する声が多い。

 04年調査でワースト3だった浅草駅のある台東区道路交通課は、同条例成立以降、放置自転車をめぐる鉄道会社との話し合いで「鉄道会社の対応が『行政の問題』と突き放す態度ではなく、真剣に話し合える空気になってきた」と感じている。豊島区のように、鉄道会社が駐輪場用地として近隣の土地を無償提供してくれることを期待する。

 00年の都内ワースト1、04年同5位だった亀戸駅を抱える江東区は、3月下旬に行われた23区の放置自転車対策の担当課長会議で「鉄道会社に全区一斉で協力を求める申し入れをしては」と提案した。作田純一・交通対策課長は「今すぐではないが、今後の動きとしてはありうる。個別の交渉でも、協力してくださいと言いやすくなった」と話している。

◆主張理解された 鉄道5社コメント◆

 区長の放置自転車税廃止表明を受け、JR東日本や東京メトロなど鉄道5社は「放置自転車問題は、税金ではなく、自転車法にのっとり解決を図るべきだという鉄道事業者の主張が理解されたと考えております。今後も従来通り、自転車法にのっとり可能な協力をしてまいります」とするコメントを出した。

《解説》

 放置自転車税を巡って激しく対立してきた豊島区とJRなど鉄道5社。両者が歩み寄るきっかけとなったのが、04年6月に設置された区の自転車等駐車対策協議会だった。

 同協議会は自転車法で定められ、鉄道会社や区議、区民、学識経験者らが参加して放置自転車対策を話し合う「場」。初めて鉄道5社が大幅な譲歩案を示し、区は同税の廃止に傾いていった。

 本来であれば税論議の前に開くべき同協議会を、区はなぜ、設置しておかなかったのか。「他の自治体の例を見ても、効果薄だから」とある幹部。総務省の要請でようやく設置した経緯は「初めに税ありき」で突っ走るあまりの「失態」と指摘されても仕方がない。

 一方、「訴訟も辞さない」姿勢だった鉄道会社。とりわけJRは同税が全国に広がる危機感を強く持っていた。今回の「譲歩」は広がり阻止の意味合いが色濃い。駅前の放置自転車に悩む他自治体は、大きな期待を寄せる。「豊島区は例外」ということになれば、企業として無責任のそしりを免れない。

 同税を巡る両者の不信感は、根深いものがあった。JRの幹部は「のど元にドスを突きつけられているようなもの」と吐き捨てるように言った。

 3月27日に同協議会が高野区長に答申した10年間の総合計画案には、「適切な自転車利用と快適なまちづくりのために」という副題がついている。協議会の場で「まちづくり」を強調したのは、商店街の関係者だった。対立するのではなく、「まちづくり」の観点から駅前の放置自転車対策に取り組む。今回の騒動によって得た教訓だろう。

■放置自転車税をめぐる動き

 00年4月  地方分権一括法施行、地方税法改正

 02年1月  豊島区が放置自転車等対策税構想を発表

 03年11月 「放置自転車等対策推進税条例」案を区議会に上程。納税対象の鉄道        5社は反対表明

 同年12月  区議会で同条例案が可決、成立

 04年4月  総務省が、対立する区と鉄道5社から公開ヒアリング

 同年6月   鉄道5社も参加し区自転車等駐車対策協議会スタート

 同年9月   総務相が「鉄道5社の理解を得るよう格段の努力を」との異例の意見        を付け、同税新設に「同意」

 同年10月  高野区長が同税実施の1年延期を表明

 05年11月 同協議会で鉄道5社が「駐輪場用地の無償提供」など具体的な協力案        を提案

 06年2月  高野区長が区議会の答弁で同税の廃止を初めて示唆

豊島区当局の動向

新税構想について」・「豊島区区税調査研究会報告書<PDF版>」(2002.1.24) ・
豊島区の法定外税に関する報告書<PDF版>」(2003.9.) ・「狭小住戸集合住宅税<PDF版>」・「放置自転車等対策推進税<PDF版>」・ 「豊島区新税情報」(豊島区ホームページ

鉄道事業者の動向

豊島区放置自転車等対策推進税への対応について<PDF版>」(2003.11.25)
構想の違法性を訴え,新税に反対の意思表明を続けてきた,東日本旅客鉄道株式会社・東武鉄道株式会社・西武鉄道株式会社・帝都高速度交通営団・東京都交通局の鉄道事業者5社が行った条例案の撤回および否決廃案を求める申入れ。
「放置自転車等対策推進税条例」に対する鉄道事業者としての意見」(2003.12.9)
豊島区放置自転車等対策推進税 に対する総務省同意についての意見<PDF版>」(2004.9.13)
豊島区に対する申入れの実施について <PDF版>」(2004.9.15)
東日本旅客鉄道株式会社・東武鉄道株式会社・西武鉄道株式会社・帝都高速度交通営団(→東京地下鉄)・東京都交通局連名で,改めて課税の違法性を主張するもの。一方で豊島区当局側に引きずられている部分も目立つ。

JR連合政策News No.4」(2004.9.3)・「JR連合政策News No.5」(2004.9.14)・「JR連合政策News No.11」(2004.11.1)・「「放置自転車等対策推進税」反対の政策要求」 (JR連合)

中央官庁の動向

麻生総務大臣閣議後記者会見の概要」(2004.5.25総務省

その他の論説・記事

週刊 自転車ツーキニスト 90号」(2002.5.22 疋田智)
地方自治体『目的税』の迷走は続く〜豊島区『自転車税』雑感
 (2004.4.13 (株)三菱総合研究所 社会システム政策研究部 升本和彦)
池袋駅東口場外車券売場設置問題」(2004.4.21)・「豊島区放置自転車等対策推進税」(2003.12.29, 豊島区タウン

総務省による豊島区「放置自転車等対策推進税」への“同意”を許すな」(2005.9.6)・「廃止は当然,だが肝腎なことは?;豊島区「放置自転車等対策推進税」」(2006.2.27)HARA Hideki's Blog)