杉並区による「レジ袋」課税策動を弾劾する

東京都杉並区当局はこの間,「環境先進都市の実現」・「ゴミの減量やリサイクルの促進」などを口実にして,いわゆる「レジ袋」に課税する策動を続けてきた。2001年11月29日で定例会最終日を迎えた杉並区議会は,条例案を「継続審議」として閉会し,現段階では強行は見送られているものの,その本質については議会内外を問わず十分な議論はされてこなかった。またこうした問題は,決して杉並一区の問題ではないのだ。同条例の反動性・反人民性を明らかにして旗幟鮮明に反対し,かかる策動を弾劾する。

杉並区長・山田宏の名で提出された「すぎなみ環境目的税」条例案は,「環境先進都市を目指し,ゴミの減量やリサイクルの促進,環境教育の充実」などに取り組む杉並区が,「区民の日常生活の中から,排出されている」家庭ゴミは「日常のライフスタイルを少し変えるだけで,ごみの減量という大きな効果を生むことが可能となる」とし,「大部分が家庭ごみとして排出され,燃やせば地球の温暖化の原因となる二酸化炭素を排出するなど,環境に負荷を与える要因の一つ」である「レジ袋の使用抑制を図るための施策」の一つとして,レジ袋への課税をしようというものだ。

課税正当化のために,用途面から「環境目的」という大義名分を掲げつつ,買い物袋持参者に4円相当のシールを渡すエコシール制度をあわせて行うことをあげたり,キャンペーンだけではレジ袋は減らないので課税という強制的手段が必要であるとの主張がなされている。その一方で課税反対の立場からは,区内の不燃ごみの中で、レジ袋が占める割合は重量ベースで4%程度(この数字も実は区側が誇張したものだった)に過ぎないことをもって効果や意義がないとするものや,課税によって客足が遠のき売上が低下するであろう商店や,レジシステムへの組み込みのために膨大なコスト負担を強いられるコンビニ・チェーンストアなどの小売業からの声があがっている。

こうした点からだけでも,いくつかの問題があることがわかる。第1に,なぜレジ袋なのかだ。すべての工業製品が最終的にごみにならざるを得ない中では「環境への負荷」という説明では説得力に欠ける。購入した商品を持ち帰るために用いられたレジ袋は,商品の保管などの他,最終的にはゴミ袋として利用されることが多い。そこで炭酸カルシウムを混入して,ゴミ袋としての利用に配慮したものがある。自治体の中には,自らこうしたレジ袋型ゴミ袋をつくっているところもあるほどだ。だが,炭酸カルシウム入りレジ袋は,コストの点から大手百貨店やスーパーのものがほとんどで,中小・個人商店で用いられることは殆どないといってもいい。ちなみに杉並区内にはデパート(百貨店)はなく,近隣地区である吉祥寺(武蔵野市)・新宿・渋谷までいかねばならない。また個人商店中心の商店街の中には世田谷・中野両区との境界近くにあるものも少なくなく,とりわけそうした地域では,税導入が死活問題になりかねない。

第2に,強制力を用いる必然性である。個人・法人の生活や活動が脅かされたり,さらには社会秩序が乱れたりすることを防ぐために,行動を規制する場合,強制力を持った法に拠る必要があるとするのは,理解できる。だがいかにレジ袋の問題をあげつらっても,法という強制力を持った手段を導入することを正当化する根拠にはなり得ない。税申告を怠った場合に過料を課すという罰則規定が,条例案に盛り込まれていることを問題にする向きもあるが,それ以前に見落としてはならないものだ。もちろん,必要以上に過剰なレジ袋を手にすることが少なくないのも事実である。その判断は各自の主体性において行われるべきものであって,決して強制力を伴って権力的に行われるものであってはならない。

第3に,課税のあり方である。地方税法が改正されて以来,各地の自治体で独自の課税が検討されているが,その中には課税権の濫用としかいいようのないものもある。2000年11月に荒川区長・藤枝和博(当時)が画策し,囂々たる反対と非難のなかで撤回した「自転車税」などはそのいい例である。杉並区が画策している「レジ袋税」は,課税のあり方から看過できないものがある。それは常識を逸脱した税率と逆進性である。レジ袋1枚の価格は4円ぐらいだという。これに5円を課税すれば税率は125%となる。もちろんレジ袋の大きさによって価格も異なるが,大きめのものでも5円ほどなので税率は100%ほどになってしまう。小さなレジ袋にいたっては実に500%以上の税率になってしまう。これはもはや正気の沙汰ではない。

購入する商品の価格との関係では,購入価格が低いほど税率が高くなるし,定額税であることからすれば,低所得者ほど負担が重くなる逆進税である。しかも日常生活のなかで反復して継続的に課税されるものであり,納税額はほとんど青天井だ。それを回避する手段を講じるにしても,そのためのコスト負担から免れることは難しい。購入金額が少ない低所得者,単身・小規模世帯にはとりわけ過重な負担が強いられることになる。これは一般的な税の逆進性の既成概念を超えたものであるといわねばならない。

「環境問題」を口実にした一切の大衆収奪と弱者イジメを許してはならない。

(2001.12.1)