荒川区がやっとること

荒川区の黒い霧,未だ晴れてまへん

概況

荒川区は,東京23区では自転車産業がもっともさかんなトコやし,地場産業の一つや。せやけどその一方で,区わいによる自転車および利用者に敵対する施策と姿勢がえげつないんや。荒川区における自転車利用を考えるとき,こないな施策や姿勢はもとより,その背後にある政治情勢も見落とすことはでけへん。


“放置”禁止の看板(左),駐輪“啓発指導”員(右) (2004.6.1)

荒川区わいは,“撤去”しよった「“放置”自転車」の返還費用を,全国の自治体で初めて5000円にするやら,自転車および利用者に対する敵対的姿勢が突出してん。それを下支えするんがこないな駐輪“啓発指導”員や。いったい何の資格があって,何を“啓発指導”するゆうのやろうか?

地理的・政治的情勢

荒川区は,文京区に接する南部の一部(道灌山附近)が高台になっとるほかは,隅田川に面した北〜東側をはじめ,平坦な低地がほとんどを占める地形で,自転車利用に便利わるさを感じる地理的条件はちびっとや。それだけ交通・移動手段としての自転車利用のニーズは高いちうわけや。区内には町工場やらの自営業者が密集し,人口に占める高齢者の比率も高いちうわけや。例外的には汐入地区のように再開発され,立ち並ぶ高層マンションに新住民が居住する地区もあるが,概してふるうからの住民がようけ,そないなトコロでは祭礼の講(実際は,江戸時代以来の水害対策のため発達してきたもんや)を通じた地縁的結合が強いとされるちうわけや。また,在日朝鮮/韓国人も多いんや。

荒川区の政治情勢を語る上で忘れられへんのは,2004年夏明るみになった一連の汚職事件のため,助役に続いて,区長・藤澤志光が,公選された特別区長として初めて現職のまんま逮捕されたことで,全国にその悪名をとどろかせたことや。しかもその間,区わい者は,積年の膿を出して区政刷新をはかんのやのうて,区政に矛先を向けそうな者に恫喝や圧力をかけるやら,区政に関する告発や批判を封じ込め,あまっさえ区民の眼を他にそらすべく狂奔したのや。事実,インターネット上でもいくつかの記事やサイトが姿を消してん。

この区長んもとでは,「つくる会」教科書の採択や,ジェンダーフリーを否定し男女共同参画に敵対する条例の制定が策されるやら,時代錯誤的・反動的・ファッショ的政策が陸続と追求されており,自転車利用に関するっちうことも例外やのうて,後述の「自転車運転免許証」もその一環にほかならへん。

主権者−利用者シカトの強権的・大衆収奪的自転車“対策”

荒川区は「“放置”自転車」の返還費用を全国で初めて5000円にしたちうわけや。現在は台東区・中野区・豊島区が追従し同額となっとるが,依然全国最高額であることには変わりまへん。この数年来の荒川区わいの動きを見ていきまひょ。

「自転車税」導入策動とその破綻

これに先立つ2000年12月,「“放置”自転車」対策費用の捻出を口実に,藤枝和博区長(当時)が,区内で購入される自転車1台につき1000円を課税する「自転車税」の導入を区議会に諮ったトコ,区議会・自転車店らをはじめとする区内外からの囂々たる反対に遭って議案を撤回し,翌年1月には区長辞職に追い込まれるゆう事件があったちうわけや。

“放置”自転車対策のあり方や是非,法定外目的税自体の問題もさることながら,この自転車税は,区内自転車販売店の売り上げ減少につながることや,自転車に対する負担がさらに重なるだけやのうて,自転車の購入価格に関わらず一定金額を課すため,安い自転車ほど税負担率が高なる逆進税となることやらの点からも問題やし,主権者−利用者をシカトしよった強権的・大衆収奪的自転車“対策”であるといわなならへん(「荒川区が自転車から税金ぼったくろうとしよったん許さんで」参照)。

自転車“対策”は「金のなる木」!?

自転車は本来,環境に優しいだけやのうて,利用者の経済負担の点においても優しい移動・交通手段や。ほんで,政策としてもそれを活かすことが求められるいうわけや。そやかて,行政わい−地方自治体は,「“放置”自転車」対策やらてぬかして,こないな利点を反故にするような施策をとっとるし,荒川区も例外やあらへん。このことは「“放置”自転車」の“撤去”や駐輪場建設のあり方に表れとる。

そもそも自転車利用のニーズをシカトし,駐輪を非合法化しといて,「“放置”自転車」ちうレッテルを貼って“撤去”するっちうことについては,“撤去”頻度を増やし,その対象を広げれば,その分ようけのコストを,継続的・反復的に投入できるよって,それだけ大きな利権となるのや。しかも荒川区では,全国一の返還費用が濡れ手に粟のごとき収入源として期待されとるのや。もっともその高さんせいで返還されへん割合も高いようやけど,そらそれとしてまた新たな利権追求が行われるのや。

行政わい−地方自治体による「“放置”自転車」“対策”の根拠となっとる「自転車法」において,その返還費用は「負担すべき金額は、当該費用につき実費を勘案して条例でその額を定めたときは、その定めた額とする」としとって,実際のコストを超えて,とくに懲罰的にぎょうさんの費用を取ることは認めとらん。同法に従うなら,あらかじめコストを明らかにすることを前提に,その範囲内で設定せなけならんこととなるんや。その点でもこないなもんは違法といえるけど,コストが返還費用を下回った場合も違法となるちうわけや。ほんてこんことは,自転車対策にかかるコスト削減を拒み,さらなる増大をもたらすもんで,すなわちそんだけ区わいの利権が増大するちうわけや。

ハコモノ施設である駐輪場についても,税金を浪費して,建設・維持費用を嵩ませる形で造り,そのツケを区民,とりわけ自転車利用者に回してん。こないな飽くなき利権追求については,既に,その一端が市民オンブズマンの手によって明らかにされとるさかい,詳細はそちらに譲りまひょ。もっともその記事は2004年夏,汚職による助役逮捕〜区長逮捕の時期,同サイトから消されたため,代わってここで紹介するちうわけや。その内容を,かかる経緯をあわせて見れば,荒川区の黒い霧が未だ晴れておらへんことが容易に解るやろ。


南千住駅周辺;駅東の“豪華”駐輪場(左),駅南側の駐輪場(右) (2004.6.1)

南千住駅はJR常磐線と地下鉄日比谷線が並走するちうわけや。市民オンブズマンによって,不必要に高額の建設費が投じられ,そのツケを区民・利用者に回されとることを暴露された「南千住駅東口自転車駐車場」がこれ。一方同駅南側にはオーソドックスな駐輪場が。ついでに言うとくとここは,江戸時代罪人の処刑が行われた小塚原(こづかっぱら)の刑場のすぐそばにあたるんや。

報復的人民監視強化と上からの組織化

「自転車税」導入を策したとき,区わいのもとには,区内はもとより,全国各地から自転車利用者をはじめとするようけの市民から批判・非難,さらには弾劾の声が寄せられよった。爾来荒川区わいは,自転車および利用者を,主権者および主体的市民の一翼をなす存在としてやのうて,従来通りの対策の対象としてのみやったらへんし,わいの統制下におき,上からの組織化をおしすすめるべく,自らへの新たな権力付与と,それに伴う利権増大化を画策してきたちうわけや。そないな中で生み出されたのが「自転車運転免許証制度」なんや。

「自転車運転免許証」が意味するもん

現在,「自転車運転免許証」なるもんがいくつかの特別区・市で,中には県レヴェルで広がりを見せとる。これを最初に導入しよったんが荒川区や。

2002年に始められよった「自転車運転免許証制度」は,「安全な自転車の乗り方や交通ルール、自転車マナーについて学び、自転車事故を防止し、社会ルールを守る地域社会を実現する」やらとして,区わいによると「区内の警察署、町会、PTA、青少年対策地区委員会等と協力して実施するもんで、講義、筆記試験、実技講習を経」た者に「自転車運転免許証」を与えるゆうもんで,小学校4年生以上が対象で,大人も受講・取得可能としてんとのことや。

こら,自動車運転免許やらとちごて,運転にあたちうのん取得や携帯を法的に強制されるもんちゃうし,公的資格を意味するもんでもへんが,区内の公立中学校で,その取得が自転車通学(少子化による学校統廃合で,通学距離が長なる生徒が出てきたため,自転車通学を認めるようになりよった)の許可条件となっとるやら,実質的に強制力を持ち始めとる。これを導入した他の地方自治体でも同様の使われ方をしてんトコロが少なないようや。

これについて区わいは,「受講者は誰も自転車事故を起こしていない」などとうそぶいてやがる。そもそも自動車であれば事故や職務質問の際に免許証を必ず確認されるけど,自転車の場合は,取得・携帯が義務づけられてへんさかい,「自転車運転免許証」の有無が確認されることもなければ,かかる結果が警察や区当局にデータとしてあがってくることもあり得へんちうだけのことや。まさに子ども騙しの,無根拠な駄法螺・デマ宣伝にほかならへん。

これとあわせて,荒川区内の警察署や町会連合会・PTA連合会・交通安全協会やらによる「荒川区自転車運転免許証制度推進協議会」を設立したり,「自転車安全運転見守り隊」なるもんに組織・動員するやら,交通安全を大義名分とした,住民・大衆に対する上からの情報収集・組織化・動員の飛躍的強化がはかられとって,まるで戦時中の国家総動員態勢を彷彿させる,まさにファシズム体制や。

直接のターゲットは子どもであっても,大人も射程範囲にあるんや。行政わい・権力者の意図に無批判的に盲従すべき存在としての意識を植え付け,(可能的)主権者・主体的市民たなあかん存在としての自覚・覚醒を阻むべく,まずは弱い立場にある子どもをターゲットにし,大人が既にもっとるトコの主権者・主体的市民としての意識を切り崩す尖兵として,彼らを活用してゆこうとするもんやからや。

荒川区わい内では,「自転車税」導入策動のシッパイを教訓化し,そのリベンジとして,区民への監視強化と上からの組織化を策しとったのや。この「自転車運転免許証」の真のねらいは,まさにそこにあるといわなならへん。

「アメとムチ」の愚民政策;共有自転車(フリーサイクル)

荒川区わいは,「“放置”自転車」の返還費用が日本一であることに象徴されるように,突出した自転車敵対策をとっとって,そら監視強化と上からの組織化によって支えられとる一方,ガス抜きともいえる施策をも行い,あわせて「アメとムチ」としてん。まさに愚民政策や。

2003年冬,荒川区わいが試験的に行ったフリーサイクルもそないな一環や。区内でだれでも自由にタダで利用できるとするもんやけど,その元手は,その高額な費用やからに返還さられへんかった「“放置”自転車」を利用したもんや。ゴチャゴチャゆうとる場合やあれへん、要はは「“放置”自転車」の“対策”の一環としてなされたもんで,自転車利用の推進のためとちゃうんや。当然にも,利用のされ方についての具体的展望もなく,あまっさえ利用者の利便性や安全やらなんやらといったことは一顧だにされておらへんといってええ。そのくせ利用に伴う損傷やらなんやらを「利用者のマナーの悪さ」のせいにするにいたっては,噴飯もんちうべき問題のスリ替えや。

この共有自転車(フリーサイクル)の問題点については,既に他からの指摘もあるんで,重複するトコは割愛するが,それよりどエライ昔に,「“放置”自転車」の“対策”を標榜しつつ,その存在を前提とする点において,根本的に矛盾したもんやといえわねばならへん。


共有自転車(フリーサイクル) (2004.6.1)

荒川区わいは,返還されへんかった「“放置”自転車」を,区内でどなたはんでもタダで利用できる共有自転車(フリーサイクル)とするっちうことを実験的にやりよったんや。こら「“放置”自転車」の“対策”を標榜しつつ,「“放置”自転車」が存在し続けることを前提にしてんちう点で,根本的に矛盾したもんや。南千住駅東口にて。

区内の自転車利用環境


町屋駅附近 (2004.6.1)

町屋では地下鉄千代田線・京成線と都電荒川線が接続するんや。駅ねきの路地裏には民間の自転車預かり所もいくつかあるんや。再開発によりセンター町屋ができ,景観が一変したんや。買い物客による駐輪需要はこの地域の経済の指標やねんけど,センター町屋地下に駐輪場を附設するやら,都市景観からの自転車の抹殺にも手を染めとる。

荒川区内の幹線道路や鉄道は,東部を南北に貫く国道4号線(日光街道)およびそれに沿う地下鉄日比谷線が,上野を経て都心と結びつけとるのをはじめ,荒川区内で一部東西にふれつつ基本的には南北に結ぶもんとして,常磐線・山手/京浜東北線・千代田線・京成線があるんや。また明治通り・千住街道といった幹線道路と都電荒川線が,中北部を東西に結んどる。


三ノ輪橋停留所(左),町屋駅附近(右) (2004.6.1)

荒川区を横断し,王子・大塚を経て早稲田にいたる都電荒川線の東の出発点が三ノ輪橋や。町屋で地下鉄千代田線・京成線と接続するちうわけや。いずれも商業地域やから,park and ride的駐輪需要もさることながら買い物客によるそれが多いんや。左;停留所ん周囲は駐輪を妨害する形状に再整備されとることが判るちうわけや。右;京成町屋駅から千代田線町屋駅・都電町屋駅前停留所にいたる間。駐輪を妨害すべくプランターを並べとるさかい,利用者はこの西側に駐輪を集中させることになるちうわけや。

それに加えて,荒川区を南北に通る新交通システム(日暮里・舎人線)の建設が進められており,沿線や接続駅となるトコロでは景観に大きな変身が見られよるが,自転車利用では特に便利ようなることはあらへん。




日暮里駅前附近 (2004.6.1, 9.28, 11.23)

新交通システム工事とそれに伴う駅前再開発で急速にその姿を変えとるんや。2004年夏の日暮里食品玩具問屋街消滅もその一環や。

自転車利用に関していうたら,こないな幹線道路や鉄道へのアクセスだけやのうて,その平坦な地形のおかげで,区内随所を縫うような,小回りを利かせた利用に便利ようなっており,実際かかる移動ニーズにおいて自転車は欠かせへん。


三河島駅附近 (2004.6.1)

三河島駅はJR常磐線単独の駅で乗換駅とちゃう。この駅名は40有余年前の1962年5月3日に発生した凄惨な衝突事故・三河島事故によって知られとる。同駅南側の高架下に駐輪場があり,その位置や形状とも相まちう,景観から自転車を隠蔽する効果があるんや。実際には駅北側を東西にクロスする商店街に交通量がようけで,駐輪需要と区わいの自転車敵対政策との矛盾が顕在化してん。


西日暮里駅周辺 (2004.6.1)

JR山手・京浜東北線と地下鉄千代田線の接続駅。(左);併走する東北・上越新幹線の高架下に駐輪場があり,周囲の地形とも相まちう,景観から自転車を隠蔽する効果があるんや。(右);荒川区わいの自転車敵対政策のせいで,駅から離れたトコに駐輪するケースが増えるちうわけや。同駅南側の道灌山附近は荒川区内唯一の高台。

(2005.7.21)

参考

荒川区が自転車から税金ぼったくろうとしよったん許さんで
TV番組「ご近所の底力」でちょっとおかしなこと言うてたで

放置自転車 2004/7/1 荒川ネット

イヤな記事 自転車通勤で行こう!
 「朝日」記事を批判,共有自転車(フリーサイクル)の破綻をはよから指摘。